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変わる進学

私立高5科入試じわり拡大 

写真:市川高校の入試に臨んだ受験生たち=2019年1月17日、千葉県市川市本北方2丁目、寺崎省子撮影 拡大市川高校の入試に臨んだ受験生たち=2019年1月17日、千葉県市川市本北方2丁目、寺崎省子撮影

写真:早稲田アカデミーの酒井和寿・高校受験部長 拡大早稲田アカデミーの酒井和寿・高校受験部長

 首都圏の私立高校の入試は、国語・数学・英語の3教科が主流だ。だが、理科・社会を含んだ「5科入試」を実施する学校も増えている。受験で5教科が必要な難関国立大への進学実績を上げるため、学力が「総合的に高い」生徒を集めることなどが導入の理由だが、「受験生に敬遠される」と避ける学校もある。

(横川結香、寺崎省子)

 ■難関大を視野、総合力求める 千葉

 市川(千葉県市川市)は17年の前期入試から、5科入試に切り替えた。1月17日に行われた、今年の入試は昼過ぎまで続いた。定員55人に対して1015人が出願し、前年より41人増えた。長男を会場まで見送った我孫子市の母親(40)は「うちは理社が得意なので、むしろ助かったという感じです」と語った。

 いずれの教科も100点満点で、傾斜配点はない。高森俊弥・広報副部長は「どの教科も手を抜かず、きちんと学ぶ姿勢を見たい。様々な教科に興味を持てれば、大学進学の際も広い選択肢の中から選ぶことができる」と狙いを話す。

 千葉県内ではここ数年、同じように5科入試を導入する高校が増えている。今年は高校募集を行う私立53校のうち、8校が行った。国立や都立、県立校は5科入試のため、学力上位層の併願先になることで、生徒を確保するという思惑もある。

 国公立大への進学実績を伸ばしている昭和学院秀英(千葉市美浜区)も17年入試から導入した。志願者は約1350〜1400人と好調で、入試担当者は「学校の存在が一回り大きくなるためには国公立への実績を伸ばしたい。5科入試でよりバランスの取れた学生を求めていく」と話す。

 渋谷教育学園幕張(同)も17年入試に3科の後期入試を廃止し、前期の5科入試に一本化した。入試対策室の高橋淑哉さんは「学校の姿勢として総合力の高い生徒を求めている。必ずしもそうだとは言えないが、やはり難関国公立大を目指すとなると5科入試生の力は高い」と明かす。

 ■3科定着、生徒の敬遠恐れる 東京・神奈川・埼玉

 栃木、群馬、茨城でも5科入試を行う私立高校は多い。一方、東京、神奈川、埼玉では限られている。小中高生向き教材を手がける出版社「育伸社」(台東区)の調べによると、今年は東京8校、埼玉2校で、神奈川はゼロだった。

 学校側には、5科入試を導入すると受験生に敬遠される心配があるという。淑徳与野(さいたま市中央区)は一部の併願入試で5科を行っていたが、7年前から3科に統一した。佐藤明弘教頭は「公立トップ校を目指す生徒の確保を想定していたが、かえって敬遠され、あまり効果を感じられなかった」という。

 栄東(同市見沼区)は3科目入試を実施してきたが、特待生志願の受験生を対象にする「特待生選抜入試」のみ5科で行っている。奥田克己教頭は「首都圏は3科入試が浸透しており、5科にすると多くの受験生に回避されてしまう心配がある」と語る。

 神奈川に拠点を置く「臨海セミナー」の西川普生・入試情報センター所長は「私立高は十分な受験者数を確保できるか、どういった生徒を預かれば3年間で伸ばすことができ、志望大学の合格につなげられるかを重視して入試要項を決める傾向が強い」と指摘する。また「大学受験を考えた時、国数英は文系・理系問わず必要になる基礎的な教科。その習熟度を測るという観点から、3教科での入試を実施する高校が多いのでは」と話す。

 ■(POINT!)国公立大受験にメリット

 高校入試に5教科は必要ないのか。市進学院の野沢勝彦教育情報センター室長に聞いた。

 私立高校にとって5教科入試の最大のメリットは、国公立大の実績を伸ばす受験生を確保できるという点です。国立大は現在、大学入試センター試験で5教科7科目を原則求めており、大学入学共通テストになっても変わりません。難関国立大では、2次試験で4教科を課す大学も少なくない。

 県内の状況も影響しています。千葉県の高校入試では、渋谷教育学園幕張を除けば、県立トップ高の人気が高いです。こうした公立高校を受験する、優秀な受験生の受け皿となる高校では、5教科入試の方がより良い生徒が取れるという判断でしょう。

 一方で、東京では都立校が低迷した時期もあり、私立校を第一志望にする受験生が多い。私立校はあえて5教科入試にしなくても、負担の少ない3教科で多くの受験生を確保することができます。

 (聞き手・宮坂麻子)

 ■私大定員厳格化で系列校に人気 早稲田アカデミー高校受験部長・酒井和寿さんに聞く

 2月中旬から、首都圏の私立高校の入試が本格化した。最近の傾向について、大手進学塾「早稲田アカデミー」の酒井和寿・高校受験部長に聞いた。

     ◇

 首都圏の公立中3生のうち、8割ほどが公立校に進学します。ただ、私立進学を志望する人数は増えています。その傾向が鮮明なのは東京で、都中学校長会の調査によると、今年は全体の24%が「都立・高専以外の全日制高校」を志望しました。都が導入した私立高校の授業料の負担軽減制度の影響も考えられますが、同じ傾向は埼玉、千葉、神奈川でもみられます。

 要因の一つに、私立大の入学定員の厳格化が挙げられます。定員を超えた大学について、文部科学省は補助金をカットするペナルティーを課しており、各大学とも合格者を絞っております。この影響で、早稲田や慶応、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)といった難関私大に合格することは、以前よりも難しくなっています。

 これに伴って、大学の系列校の人気が高まっています。今年の一般入試では定員に対し、慶応女子は約6倍、中央大付は約5倍の人数が志願しました。以前から人気が高い学校ですが、さらに加速した形です。大学にそのまま進めるという安定は得られますが、高校受験の時に進学先の大学を決めることは、将来の選択肢を狭めていることにもつながります。

 一方で、公立の中位校が大学進学で十分な実績を示せていないことも、私立人気につながっています。公立校も「グローバル」「英語教育」といったトレンドは追いかけていると思います。ただ、高校3年間で一番大きな分岐点となる、大学受験をバックアップするなど、中位校に通う生徒に合った教育が足りないように感じます。学校の魅力や価値を、どの点で生み出すのか、問われているとも言えます。

 学校選びは難しい。「自分に合った場所を選ぼう」という風潮がある一方、日本の学歴社会は依然と強い。価値をどこに置くかは本人が決めることですが、学校は「将来の選択肢をより広げるための手段」と考えてほしいです。漫然と志望校を設定するのではなく、「何かをかなえるために」学校を選ぶ。発想を逆にすべきです。

 そのうえで、学校の制度や設備は自ら使う。教育は与えられるものではなく、利用するものです。高校、大学を選ぶ際は、自己実現のために必要な「手段」という点から決めるのも大切だと思います。

(聞き手・横川結香)

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