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変わる進学

高校入試、教科横断型の試み

写真:神奈川県立湘南高校の「自己表現検査」の問題の一つ。車で走ると音楽が流れる「メロディーロード」についての会話や楽譜を読んだうえで答える内容だ 拡大神奈川県立湘南高校の「自己表現検査」の問題の一つ。車で走ると音楽が流れる「メロディーロード」についての会話や楽譜を読んだうえで答える内容だ

 神奈川県の公立高校で、教科横断型の知識を問いながら、思考力も測る入試問題が広がりつつある。「思考力・判断力・表現力」を重視する大学入試改革が進むなか、県教育委員会が対応を加速させている。

 (木下こゆる、宮坂麻子)

 ◆神奈川県、大学入試改革も影響

 車で通過すると「チューリップ」の曲が聞こえてくる「メロディーロード」。道路に刻まれた溝の上をタイヤが通過すると音が出る仕組みを考える、中学生と教員の会話文を読んだ上で、「溝の間隔と車の走行距離」の関係をグラフにしたり、聞こえる音を示す正しい音符を選んだりする――。

 2月に実施された神奈川県立湘南高校(藤沢市)の入試の問題の一つだ。楽譜を読んだり、振動と音の関係を理解したりするなど、複数の教科の知識を活用し、思考力も問う内容。県立横浜翠嵐高校(横浜市神奈川区)では、「心肺蘇生法を含む一次救命処置の手順」の正しいフローチャートを選ぶ問題が出た。

 どちらも、「特色検査」の一種の「自己表現検査」で出題された。2013年春から現在の形となった神奈川県の高校入試は内申、学力検査、面接のほか、学校ごとに特色検査を行うこともある。実技を採り入れている学校もあるが、湘南や横浜翠嵐などの難関校は教科横断型の筆記試験の「自己表現検査」を課している。塾関係者は「教科の知識だけでは解けない内容だ」という。

 県教委は、こうした自己表現検査を他校にも広げようとしている。昨年7月には、「学力向上進学重点校」に指定している湘南、横浜翠嵐などの4校に加え、「学力向上進学重点校エントリー校」に指定する13校でも行うと発表。出題も各校の独自作成を改め、共通問題と共通選択問題で構成するとした。今年の入試では既に、重点校4校とエントリー校3校が共通問題で自己表現検査を実施した。来年は全17校に広げる予定だ。

 県教委高校教育課の担当者は、小中高で教える内容を決める学習指導要領や大学入試をめぐる国の改革を意識していると語る。「様々な情報を正しく読み解き、自分で答えを練り上げる力を高める方向で進んでいる。高校でその力を高めていくには自己表現検査のような問題を出し、資質がある生徒を選抜する必要がある」と話す。

 大学入試センター試験の後継として20年度から始まる大学入学共通テストは、知識の習得だけでなく、「思考力、判断力、表現力」を重視する。どの教科でも資料などを読み解く問題を出題し、国語と数学では記述式問題も導入する。ある県立高の校長は「高校受験の段階から思考力や判断力を意識することは意義がある」と話す。

 湘南高校の稲垣一郎校長は「教科横断型の作問は教員の力を高める」と語る。今後は学校独自に作問できないことを残念に思う一方、より多くの教員が作問に関与することによる効果について「県全体の教員、教育の底上げになる」と期待している。

 ◆埼玉でも一時期実施、千葉は自己PR中心

 教科横断型の問題を通じて、思考力を問う入試は他の県でも試みられている。

 埼玉県で05年度から、公立高入試の一部で合教科型の「総合問題」が実施された。中学校からの推薦が不要で学力検査を課さない「自己推薦」の一環で、浦和高などでは総合問題を独自に作成していた。

 当時、県立浦和第一女子高の教頭で、浦和高校長も務めた杉山剛士・県立久喜高参与(61)は「教科を融合したいい出題だった。上位の生徒たちは結果として成績もよかったが、採点基準の作成は時間がかかった」と語る。教員側にも豊富な知識と思考力が求められ、作問も大変だったという。10年度入試からは自己推薦の制度がなくなり、総合問題も消えた。

 千葉県でも「自己表現検査」は多様な能力を測る一環として03年度から始まり、今年は全日制高校127校中53校が実施した。ただ、口頭や文章、実技を通じてスポーツや美術の実績をアピールしたり、自分をPRしたりする内容が大半で、神奈川県のような教科横断型の筆記試験ではない。導入しているのは中堅校が多く、市進学院の野沢勝彦・教育情報センター室長(59)は「高校入試が二極化している表れ」としている。

 ■(POINT!)大学入試の力に必ずつながる

 神奈川県のような「自己表現検査」は、思考力につながるのか。進学塾「湘南ゼミナール」の金沢浩・教務支援部長に聞いた。

     ◇

 資料や文章を読み込んで、考えさせることで思考力を問う出題形式は、大学入学共通テストだけでなく、今後様々な試験に採り入れられるでしょう。私立中の入試では以前からこうした出題があり、全般的に高校、特に公立高校が後れをとっていると感じます。

 湘南ゼミナールでは神奈川県の「自己表現検査」を「6教科目」と位置づけています。配点も高く、得点しなければ合格できない。これまでは一部だけの学校の特徴でしたが、県教委が問題を共通にしたことと、多くに広げることは非常に意味があると思います。

 千葉、埼玉、東京にも教室を展開していますが、こうした教科横断の思考力を問う問題は公立高校の入試で見られません。神奈川の中学生がこうした問題を意識して勉強することは、必ず大学入試でも必要な力につながるでしょう。

 (聞き手・宮坂麻子)

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