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2020年への情熱

思いを重ねて(1)

写真:キルギス柔道チームを招いた歓迎夕食会 拡大キルギス柔道チームを招いた歓迎夕食会

写真:夕食会のために「ノン」を準備する笹本弘子さん=いずれも2018年11月、羽村市役所、同市提供 拡大夕食会のために「ノン」を準備する笹本弘子さん=いずれも2018年11月、羽村市役所、同市提供

 ◆選手と一体感「レガシーに」

 エプロン姿の女性が広い厨房(ちゅうぼう)で、「ノン」と呼ばれる中央アジアのパンを紙皿に盛った。腰のポケットには「Hiroko SASAMOTO」の名札をつけている。自宅で作ってきたパイ料理「サモサ」や米料理「プロフ」などと一緒に次々と机に並べる。卓上には日の丸とキルギス国旗の小旗を飾った。

 羽村市役所の食堂で昨年11月に催された歓迎夕食会。招かれたのはキルギスから来日した柔道代表チームだった。4日後に大阪市で始まる国際大会に向けて、市の招待で9日間の「事前キャンプ」をしていた9人は、思いがけない母国の味を楽しんだ。

 調理を担当した笹本弘子(49)は市オリンピック・パラリンピック準備室の主査だ。昨年春に人事異動で配属された。担当はある意味、必然だった。

 *

 杉並区生まれの笹本はぜんそくを患い、3歳の時に自然豊かな羽村町(現・羽村市)に引っ越した。小学3年の時、地元のカヌークラブに入り、多摩川で練習。中学3年で全日本選手権で初優勝し、それから連戦連勝で「国内で敵無し」と言われた。

 1992年のバルセロナ五輪ではカヌー競技の代表に選出。ゲートをくぐりながら速さを競うスラロームでは女子初の日本代表だったが、本番では26人中23位にとどまった。4年後のアトランタ五輪も17位。その2年後に腰を痛めて現役引退した。

 二つの五輪で驚いたのは力の差だけではない。日本ではマイナー競技なのに、現地では観客が両岸を埋め、地元の人たちが大会を支えていた。アトランタで毎日のように見かける男性ボランティアに「何日も大変じゃないの」と尋ねてみた。

 「いや。一生に1度あるかないかの機会で、僕らも一緒に参加している」

 選手も、観客も、地元の人も、ボランティアも誰もが楽しむ。その一体感で盛り上がる。そんな特別な空間だと気付かされた。

 *

 羽村市を含む西多摩地域に来年の五輪・パラリンピックの競技会場はない。

 それでも招致が決まると、市は「レガシー(遺産)を作る」と動き始めた。前回の東京大会で聖火ランナーの伴走を務め、感動を知る市長の並木心(74)が先頭に立った。笹本と同期の須田誠(50)をすぐに都庁に出向させた。

 市に戻った須田は「事前キャンプ」の誘致を目指す。「世界から来る選手や観客との交流が市民のレガシーになる」。ただ、冷房完備の体育施設は柔道場しかない。宿泊施設の規模から大選手団は呼べない。絞り込んだ候補先が中央アジアの柔道だった。

 市の誘致活動に関心を持ったキルギスの柔道チームが、国際大会で来日した昨秋に事前キャンプを張った。昨春に準備室に異動していた笹本は、五輪など海外遠征の経験から、「選手にとって食事は大事」とキルギス料理での歓迎を考えた。キルギス育ちのパン職人が埼玉県内で開く料理教室に自費で通った。その成果を披露できたのが夕食会だった。

 キルギス側から正式な連絡はなく、事前キャンプ地に決定したかどうかはまだわからない。でも、昨秋滞在したコーチは「ぜひ今後も」と言ってくれた。武道館で今夏開催される国際大会に合わせて再訪する方向だ。市は、初の国際姉妹都市提携にもつなげられたらと期待を膨らませる。

 笹本は地元のオリンピアンとして信じる。

 「事前キャンプの受け入れで、羽村の人たちにもっと世界に目を向けてもらい、同時に地元の良さも実感してもらいたい。それがレガシーになる」

 =敬称略

 (山浦正敬)

 ◇

 東京五輪・パラリンピックに夢を描く人たちを紹介する企画「2020年への情熱」の第3部では、大会を支え、地元を盛り上げていこうという人たちを5回にわたって取り上げます。

 

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