メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

08月19日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

変わる進学

高校専門科、職業体験も進学も

写真:学校の敷地内に高さ5メートルほどの足場を組み、さらに板を取り付ける実習をする建築科の生徒たち=江戸川区一之江7丁目の都立葛西工業高校 拡大学校の敷地内に高さ5メートルほどの足場を組み、さらに板を取り付ける実習をする建築科の生徒たち=江戸川区一之江7丁目の都立葛西工業高校

 農業や商業など、職業に関する学びができる高校の専門学科。15歳人口が減るなか、ただ技術をつけるだけでなく、長期間の職業体験や進学のための指導など、各校で特色を生かした教育が進められている。

(横川結香)

 ■企業と連携、即戦力育てる

 「ゆうべの晩ごはんを、一切言葉を使わず、ジェスチャーだけで伝えてみてください」

 都立葛西工業高校(江戸川区)の3時間目。昨年度から設ける「デュアルシステム科」の1年生の教室で、教員がそう呼びかけた。身ぶり手ぶりでメニューを伝え合う生徒たちに、教員はこう加えた。「どんな表情をするか、振る舞うかで、受け入れ先の企業の方々の印象も変わりますよ」

 今月に迫った会社見学に備えて、社会に出てからのコミュニケーションの作法を学んでいたのだ。

 デュアルシステムとは、学校と企業で人材育成を担う制度。都内では専門学科として六郷工科高、多摩工業高の3校で導入されている。在学中から職業経験を積むことで、希望する職種の適性を知ったり、就職後のミスマッチを回避したりするのが狙いだ。

 葛西工業では溶接など機械系の実習を学ぶとともに1年生で会社見学と4日間のインターンシップを2回、2、3年生はそれぞれ1カ月間の就業訓練を2回経験する。そのための準備として、礼儀作法や名刺交換、働くことの意義といったキャリア教育にも取り組む。女子生徒(15)は「自分の将来設計を考える上で、就職する前に会社で働けるのはとても役立つと思った」と入学した理由を話す。

 学校全体の進路は進学が2割、就職が8割。進学を希望する生徒は、指定校推薦枠がある千葉工業大や日本工業大などの工業大学や専門学校に進むという。

 就職も好調で、昨年度の求人件数は2940件と、リーマン・ショックがあった2008年から4倍以上増えている。東京オリンピック・パラリンピックに向けて建築業の人手不足の影響もあるが、同科の取り組みを知った企業からの求人も増えたという。福田健昌校長(55)は「企業の即戦力となる人材として活躍し、ゆくゆくは会社の幹部として組織を引っ張れる存在に育てるのが目標」と語る。

 ■教科指導に力、芸大に現役合格

 都内で唯一、工芸・デザインを専門的に学べる都立工芸高校(文京区)は進学指導にも力を入れる。

 同校は金属加工の工芸技術を学ぶアートクラフト科や、家具のデザインや製作ができるインテリア科など、五つの科で構成。実習には各分野の第一線で活躍する卒業生も講師として参加する。

 学んだ技術をさらに伸ばそうと、ここ数年は全体の約8割が国公私の大学・短大や専門学校に進学する。この春には最難関の東京芸術大に現役で2人が合格。多摩美術大学や武蔵野美術大学にも合格者が出た。

 20年度から実施される大学入学共通テストを受験する2年生向けに補講を開く予定という。古藤一弘副校長(57)は「入学時から進学を希望する生徒がほとんどで、保護者からのニーズも高い。実技科目のクオリティーを下げることなく、学力向上に努めることも今後の大きな課題」と話す。

 ■バイオの資格取得も

 専門学科のある他県の高校でも、特色ある取り組みが進められている。

 千葉県立大網高校(大網白里市)では、動植物のバイオテクノロジーを学ぶ生物工学科を設ける。実習では希少植物「ハマボウフウ」の再生に取り組んでおり、培養から栽培、海岸への苗の植え付け実験などを実践。初級バイオ技術者などの資格も取得できる。

 神奈川県立横浜国際高校(横浜市)では、今年度から国際バカロレアコースを置く。国際的に認められる大学入学資格が得られる教育プログラムを1年次の1月から始め、英語と数学の授業は全て英語で進める。論文をまとめたりプレゼンテーションをしたりするなど「探究型」の学習が中心だ。この春入学した1期生の25人のほとんどが、海外大学の進学を希望しているという。

 また21年度には神奈川総合高校(同)に舞台芸術科(仮称)が新設される。演技や脚本、舞台技術などの理論から実技までの指導など幅広い演劇教育を行う予定。県教委の担当者は「ただ演劇人を育てるだけではなく、豊かなコミュニケーション能力が必要な国際社会で活躍できる人材育成を進めたい」と話している。

 ■(POINT!) 社会のニーズに応え創意工夫

 専門高校の現状などについて、文部科学省の堀内昭彦・初等中等教育局産業教育調査官に聞いた。

     ◇

 文科省の学校基本調査によると、2018年度に専門高校に在籍した生徒の割合は全体の18・3%。ここ10年はほぼ横ばいで推移しています。

 卒業後の進路は学科ごとに異なりますが、工業や商業などの職業学科全体を平均すると、5割以上が就職し、進学者も4割以上となっています。昨年度は21・4%が短大・4年制大学に進学し、22・3%が専修学校などに進みました。産業界で求められる技術が高度化したため、進学してさらに知識・技術を身に付けようとする生徒が出ていることが背景の一つでしょう。

 一方、企業で活躍する技術者を学校に招いて専門的な実習を行ったり、大学と連携して高度な技術を学んだりと、各校ならではの特色を出す取り組みも積極的に行われています。また、地域や学校の実情を踏まえ、社会のニーズに応える創意工夫のある取り組みもあります。

(聞き手・横川結香)

 

PR情報

ここから広告です

PR注目情報

東京総局からのお知らせ

東京総局では、都内の最新のニュース、企画、特集などをお届けしています。
身の回りで起きたちょっといい話をメールで「東京取材班」あてにお寄せください。メールはこちらから

朝日新聞 東京総局 公式ツイッター

注目コンテンツ

  • 写真

    【&w】カカドゥの不思議な野鳥たち

    ノーザンテリトリー〈PR〉

  • 写真

    【&TRAVEL】遊び心満載の豪華客船

    船上でサーフィン?〈PR〉

  • 写真

    【&M】廃虚の朽ち果てていく美しさ

    「変わる廃墟展 2019」

  • 写真

    【&w】劇場鑑賞券を3組6名様に

    「&w」読者プレゼント

  • 写真

    好書好日旅するように異国料理を作る

    宮崎あおいさん初の料理本

  • 写真

    WEBRONZAカーシェア急拡大

    今日の編集長おすすめ記事

  • 写真

    アエラスタイルマガジンこれぞ手軽な手土産の大本命

    手土産に縁起のよい「虎家喜」

  • 写真

    T JAPAN未来を変えるコスメ 第2回

    全米で話題の「CBDオイル」

  • 写真

    GLOBE+注目は年齢差だけではない

    マクロン大統領夫人の実像

  • 写真

    sippo絶滅の危機に瀕するトラ

    生態は猫とほぼ同じ

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ