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変わる進学

起業家教育 私立高に広がる

写真:郁文館の起業塾で意見交換する生徒たち=2018年5月、文京区向丘2丁目、同校提供 拡大郁文館の起業塾で意見交換する生徒たち=2018年5月、文京区向丘2丁目、同校提供

 私立高校で「起業家教育」が広まりつつある。人工知能(AI)が人の仕事を代替していくと言われる時代。社会と接点を持つことで、子どもたちに将来の働き方を考えてもらうのがねらいだ。

 (小林太一)

 ■IT環境学びに シアトルへ

 大妻高校(千代田区)は7月末、一部の生徒を米国北西部の都市シアトルに派遣する。目的は、ネット通販大手のアマゾン本社を訪ねること。

 巨大IT企業で働く質の高いエンジニアと話し、急成長した世界企業の最先端の技術者が生み出す発想力に触れる。海外の大学進学や英語圏の企業への就職はもちろん、新しいアイデアを考え出す力を生かした起業という選択肢にも気づいてもらうのがねらいだ。

 グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの米大手4社は頭文字から「GAFA(ガーファ)」と呼ばれ、利用者の膨大な個人情報を活用して成長を続けてきた。シアトル派遣の希望者を募ると、手を挙げたのは高校1、2年生20人。「GAFAの底力を見てみたい」と強い意欲を見せた生徒もいた。成島由美校長は「最初にしては多いほうだと思う」と手応えを語る。

 派遣は10日間を予定。6月末に米国からコーディネーターが来校し、生徒たちは4人一組の班に分かれて事前の準備を進める。期間中はホームステイをして過ごし、最終日に体験を通じて得た意見などを英語でプレゼンする。参加する1年の根岸里帆さん(15)は「アメリカの第一線の企業で働く人の考えや仕事の内容に興味がある」と話す。

 参加する生徒は理系クラスが中心で、外国に行ったことがある人がほとんどだ。シアトル郊外にはマイクロソフトの本社もあり、地元のワシントン大に同社で働きたい理系の学生が集まる。こうした学生と交流し、エンジニアが育つ環境や大学に必要な教育の中身を知るという目的もある。

 帰国後、希望する生徒には進路の相談に乗ったり、起業に必要な知識を助言したりする。成島校長は「優秀なIT人材が集中するシアトルで進路を意識してほしい。自分の力で未来を切り開く力を育てたい」と話す。

 ■国際バカロレア採用

 武蔵野大学付属千代田高等学院(千代田区)は、世界各国の大学入試資格を得られる教育プログラム「国際バカロレア(IB)」を採り入れ、起業家教育につなげようとしている。昨年4月に新設したIBコースの授業は課題探究型。大学のゼミのように討論を重ね、教師が生徒に議論させる形で進む。

 英語の授業では全員で文章を読み、筆者の意図を探る。そして、生徒が自分の力で問題の解決に向けて考えていく。ドゥラゴ英理花・IBコース長は「グローバル社会で起業するには、文化や歴史の多様性を理解して共感する姿勢が必要。IBの探究型の学習は起業家教育の精神と合致する」と話す。

 森弘達副校長(46)は、国際的な競争に勝ち抜くために、世界中のどこでも暮らしていける人材が求められる、と訴える。「今ある企業が10年後も残っているとは限らない。日本人は起業家精神を持たないと」

 IBコース2年の山口芳輝さん(16)は将来、起業を考えている。「AIで人間の健康を守る技術を開発したい。ITの専門家や医師が集まり、生活を豊かにするサービスが提供できる会社を設立するのが夢」と話す。

 ■「高3で社長」目指す

 郁文館高校(文京区)では、在学中に社長をめざすプログラムがある。昨年4月に希望者を募って始めた「起業塾」。卒業までの3年間に経営の知識と戦略を学ぶ授業を受け、単位も認定される。高校3年の1学期をめどに会社を設立し、卒業まで運営する。

 1期生は現在約30人。ビジネスモデルの策定に向け、財務諸表の見方や経営用語の理解に取り組んできた。ITや福祉、外食、旅行、リフォームなど各企業の経営者の話を聞き、業界を研究。事業と収支、資金繰りの計画を作り、来年のプレゼンで起業が決まれば準備に入る。

 起業塾担当の都筑敏史教諭(34)は「日本は欧米に比べて起業する人が少ない。この塾を経験した生徒たちが将来起業し、世界で活躍してくれれば」と話す。

 2年の鈴木七海さん(16)は、ペットの殺処分に心を痛める。捨てられてしまう犬や猫の命を救う仕組みを考えている、という。

 2年の中村和樹さん(16)は起業塾に入りたくて同校を選んだ。「膨れ上がった日本の借金を減らしたい。起業は経済の成長につながる。そのために必要な人材を育てる会社をつくれたら」と話す。

 ■(POINT!)早く社会の仕組み知る利点

 私立高校が起業家教育に力を入れる背景について、幼児や小学生を対象にした塾を経営し、子どもの自立を支援する「花まる学習会」の高濱正伸代表(60)に聞いた。

 ◇

 起業にはアイデアと行動力が求められます。発想し、仲間を引きつけ、やり遂げる力を身につけなければいけません。大学進学前の高校生が起業家教育を受け、早い段階で社会の仕組みを知るメリットは大きいと思います。

 好きなことに取り組むときの子どもの情熱と吸収力は目を見張るものがあります。関心が高い分野なら、主体的に学ぶ力を発揮できるのです。起業家教育が実を結ぶためには、自分の頭で考えるプログラムが必要になるでしょう。

 バブル崩壊後に経済が長期間停滞し、平成は「失われた30年」と言われます。デジタル化が一気に進み、偏差値の高い大学に進学して有名企業に就職する道が、安定を保障してくれる時代ではなくなりました。

 私立高校はそうした変化に敏感に気づいています。少子化が進む危機感もあるでしょう。社会が多様化する中で、起業家教育を始める学校は増えていくと思います。

 (聞き手・小林太一)

 

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