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変わる進学

AIに対応できる人材育成

写真:水酸化ナトリウムの水溶液を作る実験に取り組む生徒たち=品川区の小野学園女子高校 拡大水酸化ナトリウムの水溶液を作る実験に取り組む生徒たち=品川区の小野学園女子高校

先行きが不透明な時代を生きる力を子どもたちに身につけさせたいと、理数教育に力を入れる中学や高校が増えてきている。人工知能(AI)などが進んだ社会に対応できる人材の育成がねらいだ。

(横川結香)

 ■「STEM教育」柔軟さ養う

 私立駒込高校(文京区)では、AIなど科学技術の発展に対応する人材を育むため、2017年度に理系先進コースを開設。その目玉となるのが、2週間に1度程度ある埼玉大学STEM教育研究センターとの共同授業だ。科学・技術・工学・数学の知識の英語の頭文字を取った「STEM教育」で、柔軟な発想力を養う。

 「では委ねます!」

 6月上旬の土曜の午後。教員の指示のあと、教室に集まった生徒たちは手を動かしはじめた。用意したブロックやマイクロコントローラなどを使い、小さな自動ドア作りに挑戦していた。

 説明書や教員による手ほどきは一切ない。生徒たちは自らの発想や仲間との意見交換を頼りに、部品を組み合わせたり、プログラミングソフト「スクラッチ」でコーディングしたり。完成したドアは引き戸式や開閉式と、それぞれ異なる。共同授業を取りまとめる同大の野村泰朗准教授(48)は「自分たちで試し、失敗するプロセスを経験することがポイント」と話す。STEM教育を目当てに入学したという金子優翔さん(16)は「ただ教わるだけではなく、能動的な学びが出来る場所」と話す。

 同校では進学実績もここ数年上がっており、神戸大など国公立大に計27人、早慶大に計17人が合格。理系先進コースも今年度、初めての大学受験を迎え、電気通信大や東京理科大を志望する生徒が多いという。

 河合孝允校長(73)は「STEM教育は、単なる受験学力を身につけるためではなく、21世紀を生きていく価値観を養うための学びだ。これからの社会を生きる力を身につけたい」と話す。

 近年、理系に特化したコースを置く私立中高が増えており、三田国際(世田谷区)は今春、「メディカルサイエンステクノロジークラス」を中学で新設した。

 ■文・理系、分けずに理数教育

 今年度、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)には応募があった58校のうち、32校が指定を受けた。指定校の一つ、都立小石川中等教育学校(文京区)では、科学的思考力を養う理数教育が教育理念の大きな柱の一つになっている。

 各学年で行う課題探究学習では、「折り紙のn等分」「ドイツにおけるヒトラー観の変遷」など、テーマの設定は各自の自由。課題に対し、データや実験結果を1年間かけて分析・考察する。内容は論文にまとめ、5年次のシンガポール修学旅行で訪れる現地校で発表する機会もある。その他にも、英国ウェールズ大での講義や、科学分野で活躍する社会人らを招いた講演「サイエンスカフェ」を年間15回以上開催するなど、理数分野に接する場面が多くある。

 6年間を通して、文系・理系といったクラス分けはしていないが、例年、理系学部への進学者は4〜6割にのぼるという。梅原章司校長は「様々な科学技術が身近になった今、文系理系と分けている時代ではない。誰もが理数的な知識や論理的な思考力を養う必要がある」と話す。

 ■女子校も理系に力

 女子校でも、理系の領域に親しみを持ってもらう取り組みに力を入れる。

 小野学園女子(品川区)は中学3年間、週に1度のペースで実験に取り組む。自ら手を動かすことで、理論など知識の定着を促すためという。恵泉女学園(世田谷区)では、テーマの選択や実験方法からまとめまでを自分たちで組み立てる「探究実験」に取り組み、実験を通じて論理的な思考力を鍛える。

 安田教育研究所の安田理さんによると、1985年の男女雇用機会均等法の制定以降、生涯働けるようにと医療・看護系などの資格を取るため、理系学部を志望する女性が増えたという。学校側も理系コースを設けるなどして、生徒側の進学志望の期待に応えてきた。

 近年は、理学・工学系に進み、研究者の道を選ぶ女性も増えている。安田さんは「保護者も『女子だから……』という男女差を意識しなくなった。女性がハンディなく活躍できる進路として理系に力を入れている女子校も多い」と話す。

 ■(POINT!)「主体的な問題解決力」育む

 理数教育の重要性について、埼玉大学STEM教育研究センターの野村泰朗准教授に聞いた。

     ◇

 科学技術が進み、情報化社会となった21世紀を「生きる力」の一つとして、論理的・批判的な思考力が挙げられます。この力を科学的・数理的な見方や考え方を通して育むことが、理数教育の意義だと考えます。

 私が取り組むSTEM教育のねらいは「主体的な問題解決力」を育むことにあります。ある課題に対し、科学や数学を中心に、これまで学んできた様々な分野の知識・情報や技能を組み合わせ、多様な可能性を検討して課題を解決する。あらゆる教科を横断して思考する態度が問われます。

 科学技術によって暮らしが支えられている今、誰もが真偽を疑って科学的に考え、数値化して比べるといった見方ができる必要があります。そうした意味で、国はもっと理数教育に重きを置くべきだと思います。

 (聞き手・横川結香)

 

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