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検証 台風19号

あの日、荒川は東京を守った(中)

写真:京成電鉄の荒川橋梁(きょうりょう)。線路部分だけ、切り欠いたように堤防が低くなっている 拡大京成電鉄の荒川橋梁(きょうりょう)。線路部分だけ、切り欠いたように堤防が低くなっている

 ◆ダムも調節池も フル稼働

 全国の河川で治水を手がけてきた河川工学者の宮村忠・関東学院大名誉教授は、「荒川最大の弱点」とされる下町のあるポイントに危機感を募らせていた。

 足立区と葛飾区を結ぶ、京成電鉄の「荒川橋梁(きょうりょう)」。ここが、荒川の弱点だ。

 戦前に架けられた鉄橋だが、この部分だけ堤防が他より低くえぐれている。高度成長期に下町一帯が地盤沈下した際、鉄橋部分も地盤が沈んだためだ。荒川堤防の他の箇所は土を盛って高さを確保したが、鉄橋の部分だけ「かさ上げ」ができなかった。

 水が堤防を越えると市街地側の土手がえぐられ、決壊する。荒川が決壊すれば最悪の場合、都心は水没する。宮村氏の背筋に冷たいものが走った。「このままだと、あそこはもたない」

 万一の増水に備え、宮村氏は荒川下流河川事務所に助言を続けていた。鉄橋に土嚢(どのう)を大量に積み上げ、増水に備える作戦だ。「計画運休で電車は止まるんだから、運行の妨げにはならない。必ずやるように」

 10月12日昼。宮村氏に荒川下流河川事務所から連絡が入った。「今からやります」

 このころ、荒川は、持てる治水能力をフル稼働していた。そして、いくつもの幸運が重なっていく。

 二瀬ダムから尾根をへだてた北側の滝沢ダムに、まだ若干の余裕があった。たとえ二瀬ダムが緊急放流しても、その分を滝沢ダムが引き受けることになった。

 実は、ダムは大雨で水をせき止めている時も、平常時も、ダム施設を守るために少量の水を流し続けている。二瀬ダムが緊急放流する量だけ滝沢ダムの放水を絞り、下流に流れる水の総量を保とうというのだ。

 台風19号の特殊性にも救われた。台風が通過すると途端に雨が弱まった。

 二瀬ダムの水位計の上昇が緩やかになった。「大丈夫。ためられるぞ」。緊急放流が回避された。

 埼玉県南部。さいたま市から戸田市にかけて、荒川の本流沿い約8キロにわたる「荒川第一調節池」もフル稼働していた。3900万立方メートル、東京ドーム31個分の貯水力を持つ遊水池だ。荒川の増水時に、ここに水を引き込んで都心を守る。

 2004年の完成以来2度目、12年ぶりに水が引き込まれた。最終的に3500万立方メートルが蓄えられた。

 さらに、荒川は、夜空に浮かぶ月にも救われた。

 (抜井規泰)

 

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