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09月23日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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元気力

おじいさん譲りは誇り

写真:山本竜さん 拡大山本竜さん

写真: 拡大

 「お前はおじいさんにそっくりだ」

 よく、そう言われる。気が短く、親不孝で遊び人だったと聞くが、私は悪く捉えたことが無い。むしろ、言われる度にうれしかった。

 亡くなった祖母や、昔の従業員さんから聞くに、手先がとても器用で、とてもまねが出来ないような万年筆を次々に作った。飼っていたお猿のサンちゃんにサンタクロースの衣装を着せて店の名物にするなど、ユニークな広告活動で商売を繁盛させた。

 内弁慶で、外に対し気の弱い部分が垣間見えるものの、偉ぶる者には立ち向かった。人には良くし、可愛がった。私が生まれたときに後継ぎができたと泣いて喜んだ。その2年後に亡くなったため、記憶にはないのだが、語り継がれるその人物像に誇りを持っているからだ。

 仏壇やお墓に手を合わせるとき、祖父に語り掛けてきた。「商売継いだよ」「万年筆作れるようになったよ」。きっと伝わると信じて。のこされた道具、ペン先を診(み)るルーペと万年筆の軸径を測るノギスは祖父の血と汗と涙が染みついている。私の宝だ。

 祖父の遺品だという万年筆を持ってくる若者は少なくない。「これはお手入れや修理をすればまだ使えるものでしょうか?」「使い方をご教授いただきたくて」。早速ペンポイント(ペン先についている金属球)を診ると、まだあと60年は持つであろうコンディション。40年前に当社で作らせて頂いたものだ。

 軸に彫刻してあるお名前(ネーム)を確認し、名簿から調べ、大切に保管されている当時の書き癖診断カルテを眺める。

 万年筆の軸の中央を握り、若干寝かせて持つ。ペン先はまっすぐ紙に下り、たまに右に倒れる。筆圧は弱め、筆記速度は平均。丸みがかりやわらかい表情の文字だ。太い字がよく似合う。

 「お名前を書いてみてください」

 驚いた。書かれたのは、おじい様にそっくりな文字だ。文字の特徴は子か孫の誰かが似るものだ。そして書き癖も似る。

 「これは家族親戚の中でも、あなたこそが持つべきペンです。あなた以外の方には使いこなせないでしょう。もしもあなた以外の方がお使いになる場合、大幅な調整を必要とします」

 返事を聞く必要はなかった。若者はうれしそうにインクを選び始めたからだ。おじい様のネームが彫り込んである部分を指でなでながら。

◇◇

 やまもと・りょう 1974年生まれ。2008年から鳥取市にある有限会社万年筆博士の代表取締役。顧客の書き癖に合わせたカスタムメイド万年筆を製作している。納品まで約1年かかるが、世界中から愛好家の注文が集まる。

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