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元気力

青い空 じいちゃんの古傷

写真: 拡大

◆万年筆職人 山本 竜さん(47)

 「じいちゃん、鉄砲で撃たれた所見せて」

 40年近く前の、鳥取のとはちょっぴり違う、眩(まぶ)しくて深く青い空の夏休み。福岡は博多のじいちゃんとばあちゃんの家に遊びに行った時のことだ。

 じいちゃんは傷こそ見せてくれたが、多くを語らなかった。私もそれ以上聞けなかった。銃弾が貫通し穴の開いたふくらはぎを見ただけで、今にも泣きだしてしまいそうなのを我慢するのが精いっぱいだった。

 今だとじいちゃんの気持ちが少しだけわかる。一つは、子どもを怖がらせたくないから。もう一つは、あまり思い出したくないから。

 じいちゃんは久留米騎兵隊の名鑑に、自分の体験を記した文章を残していた。それを紐解(ひも・と)くとこうだ。

 1938年1月、20歳で久留米騎兵連隊入隊。中国・華北地方の大同に駐屯していた日本軍第26師団に編入。4月、現在の中国内モンゴル自治区であった戦闘で乗馬中隊全滅の危機に遭遇するも九死に一生を得る。

 41年3月、満期除隊後結婚。妻のおなかに子を授かるも同年12月応召。ミャンマーはヤンゴンに上陸。第56師団に加わり南東部各地の戦闘に参加。任務遂行中敵の攻撃を受けて負傷。山中を歩き回り、友軍に救出され、タイはチェンマイまで象の背に乗り移動、現地で終戦となる。

 次いで南タイに移動、収容所生活が始まり、自給自足の耐乏生活を過ごす。帰った時、初めて会う長女は4歳半になっていた。その後1男4女に恵まれた。

 戦時中は何度も何度もばあちゃんへお便りを書いていた。ばあちゃんが大切にしまっていた軍事郵便を見ると、万年筆で書かれた筆跡はまさに博多のじいちゃん。字は体を表す。力強くて大きくて、それでいて繊細で、なんだかいつもやさしくて。筆跡はその人そのものだ。お便りの内容以上に伝わってくる何かが宿っている。

 今年6月、その長女である伯母がじいちゃんとばあちゃんと娘のもとへ旅立った。合唱団の団長を務めるリーダーシップのある人だった。最初の勤め先は、国内万年筆メーカーの福岡出張所で、数年で事務長さんになったという。そのおかげで次女も四女も次々に同じ会社に勤めることができた。

 一方、私の父も当時同じ会社の東京本社に勤めており、あるとき九州地方を営業で回ることとなり、四女である私の母に出会った。

 西の空に向かって目を閉じると、鳥取のとはちょっぴり違う、眩しくて深く青い空が見える。数えきれないありがとうが天に届きますように。

◇ ◇

やまもと・りょう 1974年生まれ。2008年から鳥取市にある有限会社万年筆博士の代表取締役。顧客の書き癖に合わせたカスタムメイド万年筆を製作している。納品まで約1年かかるが、世界中から愛好家の注文が集まる。

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