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元気力

未知を発見 息子のロマン

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 「お父さん、もしどこでも好きなところに一つだけ行けるなら、どこを選ぶ?」。毎朝、小学生の息子と出かける。歩きながらの問いかけが、いつもおもしろい。

 こもってばかりではいいものを作れない。旅は人を成長させてくれる。13歳で行ったネパールでは高山病にかかったものの、何とか山に登り、早朝にマチャプチャレ山を眺めた。神の山だと確信できる美しさだった。ホームステイ先の方々に、たいへんお世話になった。

 20歳で行ったアメリカは3日目に荷物をすべて盗まれ、現地でのパスポートの再発行が最初のイベントとなった。だが、出会った方々に助けられ、3カ月かけてアメリカ横断をすることができた。若くて貧しくてつらい旅ほど後で愉(たの)しい。

 5年前にオランダのお客様に誘われ、アムステルダムで受注イベントを開催。せっかくの機会だから、と駆け足でヨーロッパをぐるり11カ国回った。

 ストライキで高速鉄道TGVが運行しないことが多く、悩まされたが、憧れだったウィーンフィルとベルリンフィルを予定通り聴くことができた。コンサートマスターのチューニングサウンドだけで全身がしびれて涙があふれた。普段仕事をちっとも休まないからと、行かせてくれた家族に感謝した。

 さあ、息子にどう答えるか。思い切った答えが面白いだろう。

 シベリア鉄道でウラジオストクからサンクトペテルブルクまで約1万キロ。バレエとエルミタージュ美術館が楽しみだ。または、南極大陸最高峰ビンソン・マシフに登るのはどうか。船の道中、クジラに出合えるかもしれない。

 いや、違う。アマゾンだ。息子が好きな本に開高健の「オーパ!」があるではないか。ピラルクーなどの怪魚を釣ろうじゃないか。

 これだ。これが100点の答えだ。息子はお父さんと夢を共有できたと思い喜ぶ。そうなるに違いない。

 自信満々に鼻息を荒くして答えた。「そうだな。お父さんはアマゾンに……」

 と、途中まで言ったところで、息子は自分の額をぱちんとたたき、こう言った。

 「ロマンが無いなーお父さんは。そんなのはお金と時間があれば行けるでしょ? 宇宙船に乗って誰も知らない星に降り立ってみたいとか、潜水艦に乗って深海の未発見の生物と遭遇するとか。わからないかなー」

 あきれながら学校へと向かっていた。自分が五感で感じた事がない事を感じるのが旅の醍醐味(だいごみ)。しかしそれ以上に、未知を発見できるなら、とびっきりのロマンがある。息子に大切なことを教えてもらった。ものづくりに生かしたい。

◇◇

 やまもと・りょう 1974年生まれ。2008年から鳥取市にある有限会社万年筆博士の代表取締役。顧客の書き癖に合わせたカスタムメイド万年筆を製作している。納品まで約1年かかるが、世界中から愛好家の注文が集まる。

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