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07月04日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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元気力

挫折続き でも「為せば成る」

写真: 拡大

◆万年筆職人 山本竜さん

 「将来、万年筆職人になるんでしょ?」

 中学1年生だったころによく聞かれた。人生を人に決められたみたいで嫌だった。「自分の人生は自分で決めるから」とつっぱった。

 幼いころからスポーツが苦手で、よくからかわれ、仲間に入れてもらえないことが多かった。勉強は頑張ればなんとかできるようだったから、受験してみないかと言われ、猛勉強し、中学入試を受けた。合格したはいいが、入学後はレベルについていけず、あっという間に落ちこぼれ、今度は勉強でもからかわれるようになった。

 2年生の時、それまで無かった吹奏楽部を先生や友達と作った。皆で音を合わせると気持ちがよかった。後輩たちも可愛く、それだけが楽しみで学校に通った。「為(な)せば成る」。祖母に何度も言われた。

 高校ではアルバイトに夢中になった。よく流行(は・や)っている焼き肉店。慣れない頃はお客に叱られたが、そのうち「慣れてきたね」と言われ、常連客の好き嫌いを覚えると「よく気が利くね」と褒められるようになった。学校では叱られてばかりの自分が、社会では少しくらい役に立てると思うと、自信が持てた。

 同級生が進学や就職をする頃でも、まだアルバイトを続けた。定職についていないと馬鹿にされたが、英語の勉強をして、アメリカ横断をするためだった。放浪中は度胸と、実践的な英会話を身につけることができた。

 帰国してからは運送会社に就職、バイクのロードレース活動に夢中になったが、けがで挫折した。その後はバイクよりも、古い自動車を直すことに夢中になった。

 実家の商売の助けになれないかと、東京で医療の分野で起業するもうまくいかず、鳥取へ帰った。

 本当はずっと万年筆の仕事に誇りを持っていた。無くしてはいけない仕事だと思っていた。でも自信が無かった。自信をつけてから帰るつもりが、打ちのめされて帰ってきた。無駄なことばかりして。回り道をして。

 鳥取の工房に帰ったら、「鍛冶(か・じ)屋が打った刃物に予備は無い、ろくろは老朽化、新しく作ってくれる人はいない、この仕事もこれまでだ」と言われた。強烈な悔しさを感じると同時に覚悟が決まった。

 いや、「為せば成る」。無いものは作ればいい。自動車部品を流用してろくろを試作できないか。今でも日本中を探せば鍛冶屋はいないか。ITで世界中から顧客を獲得できないか――。

 人生という名の白い画用紙に、これまで不規則に描いてきたいくつかの点が太い線でつながっていく感じがした。

◇◇

やまもと・りょう 1974年生まれ。2008年から鳥取市にある有限会社万年筆博士の代表取締役。顧客の書き癖に合わせたカスタムメイド万年筆を製作している。納品まで約1年かかるが、世界中から愛好家の注文が集まる。

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