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04月26日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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朝をひらく 【地域交流センター理事 明石 あおいさん】

リノベーション

新築よりもぜいたく

 昔から建物の夢はよく見る。幼い頃から、異国情緒漂う大きな建物の中をさまよう夢を頻繁に見てきた。でも最近出てくるのは、日本の建物ばかりだ。それも、木や土などの材質や手ざわり、建具の間からこぼれる光や風、土ぼこりなどがやたらと印象に残る夢を見る。

 その理由は分かっている。射水市・内川沿いの古民家をリノベーション(改修)してきたからだ。そして、来月からはここが仕事場だ。工事の約半年間、ほぼ毎週現場に赴くうちに、私の建物の捉え方は180度変わった。

 以前は、広さやカタチや色で、建物の魅力を捉えていた。まっさらな空間に新品の積み木を積んでいくような、新築的な発想。いわば“足し算”の建て方だ。

 一方、リノベーションの場合、既に構成済みの空間から活(い)かすものを残すという、“引き算”から始まる。建物がもともと持っている素材や雰囲気に向き合い、それを活かす努力に、多くの時間と手間がかかるのだと知った。耐震補強とか現代風アレンジとか、新たに足すイメージも強いかもしれないが、“もとを活かす”ことに使うエネルギーの方が、断然かかるのだ。

 現場では毎週、新たな問題が発覚した。間口が狭く奥に長い町家の構造に、複雑極まりない増改築が繰り返された場所。土蔵の中から大量に砂が出てきたり、大事な柱を支える礎石が貧相なコンクリートブロックだったり、内装材をはぐると壁や断熱材がなく、すぐ外壁のトタンがあらわになったり、お隣さんの部屋が見えちゃったり……。確かな技術と職人魂を持った頼もしきプロたちは、「これどうするけ?」と頭をかかえながらも、次の週には、見事に解決してくれていた。素材や歴史を活かすという基準があるからこそ、工夫し甲斐(が・い)があるし、結果的に独創性の高いものができるのはないだろうか。

 先週は、この道55年の左官屋さんの協力を得て、思い出づくりの土壁塗りも体験させてもらった。石灰の混ざった珪藻土(けい・そう・ど)の生臭さと、コテで塗りつける時に砂がこすれるザサササ……という音が印象的だった。自分たちの塗った壁に比べ、職人さんの仕上げてくださった壁は圧倒的に美しい。改めて、職人の仕事にほれぼれした。土壁をなでさする喜びも覚えた。

 大工さん、左官屋さん、建具屋さん……実にたくさんの職人が、既存の建材や工法に敬意を払いながら、自分の知識や技をかけて取り組んでくれた古くて新しい場所。私にとっては、ピカピカの新築の何倍も、ぜいたくで価値があるように思えるのだ。

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