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04月26日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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人が担い生き続ける

 「文化的景観」という概念がある。風土に根ざし営まれてきた人々の生活や生業などによって形作られた景観地のことだ。天然記念物や伝統的建造物群保存地区のように、その価値を評価する学術的な裏付けがなかったが、2004年にようやく国の選定制度ができ、注目されてきた分野だ。

 文化的景観は、住民には、生活に根差していて身近で当たり前にしか見えない。しかし、よそから来た者は、ここにしかない光景とともに、土地がベースに持っている精神性というかオリジナルの鼓動みたいなものを、感じるものだ。

 景観は「営みの結果」だ。住民の暮らしぶりや意識が核となり、外観に少しずつ影響を与え、まちの景観が作られる。細かくて圧倒的な量の住民の意識の集合体が立体的に迫ってくるから、ぐわっと心を動かされる。

 振り返れば、私が射水市新湊地区の内川に移住した理由は、まさに人々の生活や生業が景観を作っていたからだ。それに、いつかの時代に誰かが一斉に整備したのでなく、徐々にこうなった所にぐっと来たのだ。密集していて猥雑(わい・ざつ)で、あったかくて面白い。いろんな角度から楽しめるのに、明らかにある一つの芯にたどり着く感じがするのだ。

 しかし、この景観にも、技術革新と職住分離が進んだおかげで、風土や自然環境に合わせる必要がなく地域性もほとんど感じられない建物が増えた。核家族化が進み、世代を超えた慣習や規範のリレーも途絶えつつある。土地の鼓動は切れ切れ、絶え絶えだ。内川だけでなく県内の様々な地域も、同じような状況だろう。

 だからと言って、この景観を守れ!保存しろ!とは言いたくない。守る、保存と言った瞬間から「現役引退」感が漂うからだ。文化的景観は生活とセットだからこそ、変わる余地を奪い「殿堂入り」させてはいけないのだ。最高に輝いていた時代のまち並みを再現・保存している地域は少なくないが、それにも実は違和感を覚える。その時代はバブルのように実力以上に「盛られて」いたかもしれないし、何百年か前の一大転換や流行に縛られて、今や未来がなおざりにされている気もするからだ。

 いろいろ言ったが、結局のところ、私の目の前にある文化的景観にできることといえば、この地域でより長く過ごすことだと思っている。職住を近接させながら、この風土や自然環境に合った新しい暮らし方と生業を模索したい。景観は、見物する人だけのものではなくて、担う人がいてこそなのだから。

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