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北陸六味【社会学者 上野千鶴子さん】

こんな世の中に誰が・・・

写真:イラスト・田中聡美 拡大イラスト・田中聡美

 60年安保闘争のときには、樺美智子さんが犠牲になった。あまり知られていないが、70年安保闘争のときにも山崎博昭くんという死者が出た。時は1967年10月8日、ベトナム戦争が熾烈な時期だった。日本国内の基地から次々に北爆(北ベトナム爆撃)のための米軍戦闘機が飛び立つ。当時の佐藤栄作首相の南ベトナム訪問を阻止するための羽田闘争で、かれは亡くなった。

 あれからちょうど半世紀。この10月8日に、東京で「羽田闘争50周年山崎博昭追悼集会」が催された。この日に間に合うように、関係者の寄稿集『かつて10・8羽田闘争があった』(合同フォレスト)が刊行された。総勢61人、600ページを超える大著である。そこに、わたしも寄稿した。

 山崎くんは京都大学文学部でのわたしの同期生だった。かれの死は、わたしの人生を変えた。デモというものにわたしが生まれて初めて参加したのは、山崎くん追悼デモだったからである。それから、学生運動にのめりこんだ。

 あのころ……戦争はもっと身近にあった。ベトナム帰りの米兵が、日本のあちこちにいた。日本はアメリカの戦争に「参戦」していた。山崎くんたちは、アメリカの戦争に反対していただけではない。アメリカの「共犯者」だった日本にも反対したのだ。

 今日でも北朝鮮を「消滅」させると口にする軽率な大統領に、日本の首相はいそいそ同盟を約束する。あの頃より、日米の武力はかくだんに強化され、北朝鮮は核武装までしている。もし、もし、「朝鮮半島有事」が起きたら……被害は想像を絶する。何がなんでも戦争を防がなければならないのに、政治家はこぶしをふりあげるばかりだ。これがわたしたちの望んだ社会なんだろうか? 目の前がくらくらする。

 こんな世の中に誰がした……と言って、当時の若者は親世代に詰め寄った。政治も、経済も、学問も、オッサンばかりで占められていたから、オッサン、うざい、と対抗した。なのに、自分たちがオッサン、オバサンの年齢になってみると、なにが変わっただろうか? 若い世代から、こんな世の中に誰がしたと詰め寄られたら、言い訳できない立場にいる。いまや女の防衛大臣や女の核武装論者までいるのだから、女だからといって平和主義者とは限らない。

 10・8集会の会場は髪の毛の白いオジサン、オバサンで占められていた。半世紀ぶりに再会したひともいる。で、オマエはこの半世紀、何をしてきのか?と18歳で時間がとまったままの山崎くんの遺影は、わたしに問いかける。

 どんな社会を後続の世代に手渡したいのか、手渡せるのか……と思うと、呆然とする。何もしてこなかったわけではないが、こんな世の中をつくってしまった非力に、内心忸怩たる思いだ。原発事故を起こしたのに、原発ひとつやめられない政治、博打のような金融政策を続けて借金がふくらみつづける政府、戦争ができるようになる憲法改悪……どれもこれも「人災」なのに、なぜ止められなかったの?とあとの世代に責められたら、どうすればいいのだろう?(社会学者)

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