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北陸六味【社会学者 上野千鶴子さん】

宝飾品は誰のもの?

 山梨県内の八ケ岳南麓(なんろく)に山荘を持っている縁で、山梨県産業技術センターから講演依頼が来た。テーマは「伝統産業とファッション文化」というもの。

 不易流行というが、伝統は「不易」、ファッションは「流行」のうち。ほんらい相いれない。「伝統とは、前時代の遅れたテクノロジーの別名である」と喝破したのは、評論家の柄谷行人さん。生活文化が変われば、伝統産業は廃れるのが運命である。そんな例はたくさん見てきた。京都のキモノ産業は、和装から洋装への変化にともなって凋落(ちょうらく)したし、輪島の漆器だって、食洗機にかからないとなれば手が出ない。文化財保護の意味はあっても、かつてのマーケットを取り戻すすべはない。

 山梨には宝飾産業がある。特産の水晶は産出量が激減したが、その代わり原石を輸入して加工する技術力とデザイン力には定評がある。なのにブランドの下請けや業者への卸などで、産地の山梨の名前は、途中で消えてしまっているとか。

 中間に業者が入れば当然収益率は低くなる。直接エンドユーザーに届く方が効率はよい。最近の農業によるムラ起こしは、原材料産地から脱して、6次産業化(1次「生産」+2次「加工」+3次「販売」で6次産業と言う)をめざすのがもっぱらだ。

 宝飾品のマーケットとは何だろうか? 前近代なら王侯貴族が権力の象徴として使った。近代になってから、ブルジョアジーが富の象徴として消費した。経済学者のヴェブレンはこれを衒示(げんじ)的消費(みせびらかし)と呼ぶ。今時ならセレブのコミュニティとか中国の富裕層だろうか。事実、中国市場は活況らしい。日本にはたいしたセレブはいないし、皇族や旧華族も質素、それに他人の羨望(せんぼう)を買うみせびらかしを好まない。それならいま、宝飾に手を出すのは誰だろうか?

 バブル期に宝石の営業に日本中を飛び回っていた男性の話を聞いたことがある。1日数百万円の売り上げのなかで「自分のフトコロからおカネを出して宝石を買った女性はいますか?」と聞いたら、彼の経験では皆無だという。スポンサーは全員男性。妻や愛人や娘に買ってあげたのだろう。そんなバブルの夢もはじけた。

 いま宝飾品を買う意思決定をするのは、稼得力を持った女性である。自分のためだけのパーソナルな記念日(お誕生日とか卒業記念)や、何かを達成したときの「自分へのごほうび」消費なら、まとまった金額を出す。誰にも相談しなくていいし、誰にもねだらなくてすむ。女性の就労が進み、女女格差も拡大したが、そのなかで男性なみの稼得力を持った女性たちも登場した。

 マーケットとは購買力に裏付けられたニーズ。マーケットの変貌(へんぼう)を踏まえて、山梨ブランドが社会的に認知されたらいい、とパートタイム県民のわたしからの提言だ。

(社会学者)

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