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北陸六味【北陸学院大准教授 田中純一さん】

花畑 被災地の未来映す

写真:花畑で作業する住民と学生=2014年月、岩手県陸前高田市、筆者撮影 拡大花畑で作業する住民と学生=2014年月、岩手県陸前高田市、筆者撮影

 筆者が勤務する大学には、東日本大震災で被害を受けた東北の支援に取り組む学生ボランティア団体「よりそいの花プロジェクト」がある。2012年に発足し、これまで27回、延べ500人を超える学生と教職員が岩手県を中心に活動を続けてきた。

 プロジェクトは、「傷ついた心の中に花が咲くように寄り添い続けよう」「その時々に必要とされる活動をしていこう」という思いから命名された。建物の泥出し、被災した保育園での絵本読み聞かせ、遺留品捜索など内容は多岐にわたるが、もっとも時間を割いてきたのが花畑づくりだ。

 「花を植えるボランティア」というと、単純で簡単な活動として捉えられがちだ。学生の中にも気軽に参加した者が少なくない。しかし、住民と一緒に活動するうちに「花を植える」という行為の意味が思いのほか深いことに気付く。

 岩手県陸前高田市で、住民有志が津波で更地になった場所に花を植え始めたのは、もともとは亡くなった家族や仲間への思いからだった。種や球根を植えながら亡くなった家族や友人と対話し、家があった場所に向き合う。それだけでも大きな意味があるが、時間の経過とともに新たな意味を見いだしてゆく。

 更地に盛り土をすることになり、花畑を仮設住宅近くの高台に作り直したあとも、住民は黙々と花畑と向き合った。雨の日も雪の日も欠かさず世話をしていた。それは、植えられた場所で必死に根を張る花に、自分を重ね合わせるようになったからだ、と思う。

 花や土と向き合いながら過去を見つめ、現在を生き、未来を見据える。その土地や自然、周囲の人々と関わりながら「暮らす」ことの意味を考える。花畑は住民も気づかぬうちに、住民自身の未来の姿を重ねたものへと変容していった。

 道路や防潮堤であれば年度ごとに予算が組まれ、工事が進められていく。時間がたてばよくなる。当初、学生の多くが復興をそう捉えていた。しかし、一人ひとりの暮らしに視点を当てた復興・再生となると簡単ではない。ちょっと油断すると、効率性や計算可能性に絡め取られ、復興のあり方やスピードに戸惑う住民を置き去りにしてしまう。

 住民の横で土を耕しながら、学生たちは「住民たちはなぜここまでするのか」と思いを巡らせ、「暮らし続ける」ことの意味を考える。そして、住民たちが「ここで暮らし続ける」ことに学生一人ひとりがどう寄り添うことができるのかを考え始める。

 住民が仮設住宅を出たあとも会いに行ってみたらどうだろう。花畑を住民だけでなくみんなが集まれる場所にしたらいいのでは。夕食後のシェアリングタイムでは、学生たちの思いが漠然とながら、言葉になって表れた。議論はときに深夜まで続いた。同じ場所に継続して関わり続けたことは、学生が自ら学び、自らの社会的使命に気付く重要な契機にもなっていった。 (北陸学院大教授)

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