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北陸六味【社会学者 上野千鶴子さん】

「尊厳のない生」とは

写真:イラスト・田中聡美 拡大イラスト・田中聡美

 このところ、安楽死に関する本が次々に出ている。橋田壽賀子さんが『安楽死で死なせて下さい』(文春新書、2017年)を刊行。これに先立つ橋田さんの論考への反響を受けて、『文芸春秋』が「理想の逝き方を探る 安楽死は是か非か」を大特集(17年3月号)。60人の識者にアンケートをとったところ、回答は「安楽死に賛成」33人、「尊厳死に限り賛成」20人、「安楽死、尊厳死に反対」4人、「選ばず」3人となった。がん治療に詳しい近藤誠医師が橋田さんと対談、最近出した『最高の死に方と最悪の死に方』(宝島社、18年)のなかで、『文芸春秋』の特集を紹介している。ご本人によれば、「最高の死に方」とは「検査も治療もしないで、がん死が最高」だとか。安楽死は積極的自殺幇助(ほうじょ)、尊厳死は延命治療の抑制とされるが、区別は難しいと近藤さんは指摘し、日本尊厳死協会が当初安楽死協会としてスタートしたことを紹介している。

 わたしと同世代のライター、松原惇子さんに『長生き地獄』(SB新書、17年)がある。松原さんはわたしと同じおひとりさま。その彼女が「孤独死よりこわい長生き」と書く。彼女はオランダの安楽死協会まで訪ねるという力の入れようだ。オランダで「よい死」を意味する安楽死は、「苦しむ他者に対する愛」だという。他にも宮下洋一さんの『安楽死を遂げるまで』(小学館、17年)も現地ルポだが、当初安楽死肯定派だった宮下さんは現場を訪ねたあと、揺れ動く。ほんとうをいえば、安楽死を選ばずにすむ社会の方がよいのではないか、と。

 わたしは『文芸春秋』特集号の「安楽死にも尊厳死にも反対」したごく少数派の4人のうちのひとり。他に篠沢秀夫さん、外山滋比古さん、横尾忠則さんがいる。ALSの患者だった篠沢さんは麻痺(まひ)のからだであきらめずに病と闘い、昨年亡くなられた。頭が下がる。安楽死賛成派には、浅利慶太さん、金子兜太さん、山田太一さんなど尊敬するひとびとの名前が並んでいて、ショックを受ける。

 尊厳のない生より尊厳のある死を、という考え方の背後にある「尊厳のない生」とは、仕事ができなくなって、役に立たなくなったら、ひとさまに下の世話を頼まなければならなくなったら、認知症になって判断力を失ったら……というもの。あまのじゃくのわたしはいちいちひっかかる。人間、役に立たなきゃ、生きてちゃいかんか、と思うし、おむつをするぐらいで死ぬ理由にはならない、と思う。認知症になったって機嫌よく生きているひとたちはいくらでもいる。最後まで生き抜いてもらえばよいではないか。

 思い出すのは相模原障害者大量殺傷事件だ。犯人は呼びかけて応答の能力のない人を、「生きる価値のない生命」と見なした。老いは成長の逆をたどる過程。これまでできていたことが次第にできなくなり、み〜んな中途障害者になる。生命の選別や「よい死」を考えるヒマがあったら、要介護になっても安心できる社会、安心して認知症になれる社会をつくりたい。(社会学者)

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