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北陸六味【福井県立高校教諭 南部泰啓さん】

雇用水増し 二重の怒り

写真:「作曲するベートーベン」 イラスト・鳥居レイ 拡大「作曲するベートーベン」 イラスト・鳥居レイ

 いつも人気のNHK朝の連続ドラマ、前回「半分、青い。」のヒロインは片耳が聴こえなかった。これは脚本家・北川悦吏子さん自身が左耳を失聴した経験を元に書かれたお話だということです。

 官公庁、国家公務員から地方公共団体、警察にいたるまで障害者を水増し雇用していた事実が明らかになりました。1年以上、難聴者として苦しんでいる私からすれば、二重の怒りが湧き起こります。

 一つは理想(表向きの建前)と現実(裏にある本音)の使い分けという、いかにも日本人らしいふるまい。2年後の東京パラリンピック、現在開催中の福井国体・全国障害者スポーツ大会。表面はきれいごとを並べておきながら、実際は水増し雇用のようなごまかしがまかり通っている。最近こういうケースって枚挙にいとまがないですよね。

 違法行為を繰り返しながら道徳教育を推奨する。公正・愚直・誠実・謙虚・真摯(しんし)・反省・思いやりと口では言いながら実際にはごまかし・シカト・嘘・恫喝(どうかつ)・パワハラ・傲慢(ごうまん)・欺瞞(ぎまん)・冷淡があからさま。パラリンピックも障スポも、国などが開催にかかわるのは偽善的と感じます。

 そしてもう一つは障害者として認定されること自体のハードルの高さです。私は右耳がまったく聴こえません。さらに左耳の聴力も健常者の半分以下ですが、障害者手帳はもらえません。

 日本の障害者認定は諸外国と比べ、その基準は大変厳しい(特に聴力)。先進国の中では最もきつい。左耳に高額な補聴器をかけて、なんとかギリギリ仕事を続けています。補助金も一切なし。日本の行政は障害のある人、ハンディのある人に対して冷たいのです。

 この原稿を書いているさなか、安室奈美恵さんのコンサートでダウン症の女性が入場を拒否されたというニュースが……民間もひどいね。

 さて、半分どころかほぼ聴こえない私にとってつらいのは、音が聞こえても、会話が聞き取りにくいという問題。特に悲しいのは大好きだった音楽がまったく楽しめなくなったことです。いい音楽は本当に心を揺さぶります。その経験を喪失してしまった今は一度死んだも同然だと感じるほどです。

 凡人の私でさえこんな心境になるのですから、かの音楽家ベートーベンが失聴したときのショックはいかほどであったろうと想像します。その悲嘆は察するに余りある。今みたいに補聴器は存在しないし。しかも、その最悪の逆境の中から彼は音楽家として交響曲やピアノソナタなどさらに実績を上げていく。

 活字への集中力大幅アップ。公共の場やカフェなどで「うるさい!」とイライラしない。他人のうわさ話や自身への悪口も聴こえない。安眠を妨げるものがない。ささやかなけがの功名ですが、彼も感じていたでしょうか?(福井県立高校教諭、カウンセラー)

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