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北陸六味【北陸学院大准教授 田中純一さん】

避難所 住民自ら考えを

写真:豪雨に見舞われた岡山県内の避難所に設置された段ボールベッド=2018年9月、筆者撮影 拡大豪雨に見舞われた岡山県内の避難所に設置された段ボールベッド=2018年9月、筆者撮影

 今年8、9月、石川県内は豪雨や台風に見舞われ、各地で避難勧告や指示が発令された。開設された避難所を訪れてみたところ、避難してきていた住民は多くなかった。

 その背景には、「自分は大丈夫」「みんなが避難しないから」といった心理があると思われる。あるいは勧告や指示の情報が伝わっていない、情報の意味を理解していない住民もいる、といった問題もあるだろう。だが、ここでは違った視点で考えてみたい。避難所が「避難してよいと思える場所」になっているのか、という視点だ。

 エアコンがなく、仕切りのない体育館での生活。高齢者が毛布を床に敷いて寝起きする過酷さ。弁当や菓子パンが続く食生活。避難所では必ずしも「寝る」「食べる」「排泄(はい・せつ)する」といった生活の基本部分への対応が十分ではない。

 災害や紛争時の人道的対応を定めた「スフィア基準」という国際基準がある。NGOや国際赤十字が策定したもので、被災者の尊厳ある生活への権利・援助を受ける権利・保護と安全の権利をうたっている。その上で、(1)給水、衛生、衛生促進(2)食糧の確保と栄養(3)シェルター、居留地、ノン・フードアイテム(4)保健活動――の4分野での最低基準を記している。

 たとえば、トイレは少なくとも20人に1基。居住空間は1人当たり3・5平方メートル以上の覆いのある空間で、夏の暑さ、冬の寒さに対応する温度管理がなされている、といった具合だ。

 わが国には内閣府が作成した「避難所運営ガイドライン」がある。避難所の質の向上が「被災者の健康を守り、その後の生活再建への活力を支える基礎となる」と指摘し、避難所運営ルールの確立や要配慮者への対応、トイレの不足数の把握など、実施すべき業務をチェックリスト方式で紹介している。だが、援助を受ける権利や、援助や保護に関する国の責務に当たる記述は見当たらない。

 避難所は、体力を衰えさせる場所や未来を描くことをためらう場所であってはならない。一時的でも住民が生活する場所であり、普段の延長線と捉えるべきだ。平時と非常時を切り離して捉えることが、避難所生活の過酷さを見過ごすことにつながる。仮設住宅の建物は「仮」でも、営まれる生活に「仮」の時間などない。

 だが、住民が「避難所は行政が立ち上げて運営してくれるもの」と受け身でいたら、避難所はよい空間にはならない。住民が暮らしやすくなるようなアイデアを自ら積極的に出して動くことも必要だ。たとえば、避難所として利用される学校のトイレを洋式に変えていくよう教育現場と一緒に考える、といった動きも考えられるのではないか。

 住民が援助を受ける権利を自覚し、たとえ数日でも最低限度の暮らしが担保されて誰もが安らげる避難所空間を考えていくことが、次の災害の備えに必要だ。(北陸学院大教授)

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