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北陸六味【社会学者 上野千鶴子さん】

社会運動の後継者問題

写真:イラスト・田中聡美 拡大イラスト・田中聡美

 このところどこへ行っても聞くのが、NPOの後継者問題である。NPOというより、社会運動全般の、と言ったほうがよいかもしれない。

 女性運動、障害者運動、消費者運動、環境保護運動、平和運動などさまざまな運動は、戦後生まれの団塊世代を中心とした担い手によって継続してきた。その団塊世代も高齢期。職業生活からはリタイアし、元気は残っているが現役感は低下している。

 女性運動を例にとろう。1970年代に生まれたウーマンリブ以降の女性運動は、地縁・血縁に頼らない、というより地縁・血縁の束縛を断ち切った新しいネットワーク型組織をめざしてきた。その前の世代にあったのは町内会をもとにした婦人会組織。地域婦人会の会長さんたちは今から半世紀前にも70代に達していたし、年功序列で若い者が口をきけない縦型の組織は敬遠されて、組織率が下がっていた。いずれこうやって世代交代が起きるのねと思っていたら、そのお鉢が自分たちに回ってきた。同世代の仲間は若い時から活動的なひとたち。そのひとたちが一緒になって歳をとってきたが、気がつけば毎年1歳平均年齢が上がるという状況になっていた。

 先日、生活クラブ生協のワーカーズコレクティブの集まりに呼ばれて行ったら、同じ嘆きを耳にした。「私たち、一生懸命やってきたのだけれど、気がついたら後に続くひとがいない」と。生協は高学歴で意欲も能力も高いのに行き場のない女性たちの受け皿になってきた。気がつけば、同じように意欲と能力の高い若い女性たちは、生活のために必死で働いており、地域活動をする余裕なんてない。それに昔は女性の能力を生かす場所はなかったが、今では才能のある女性はカネになる仕事をしている。だからカネにならないボランティア活動に誘いにくくなった。

 障害者の親の会についても、若いひとが入ってこないと嘆きを聞いた。ないない尽くしの時代にはあらゆるものを闘いとってこなければならなかったので、親同士の連帯は必須だった。制度が整うとサービスユーザーとしての権利を行使すればよくなって、ひととつながる理由がなくなる。親の会に若い世代の障害者の親たちが入ってこなくなったんだそうだ。

 障害者運動でも「ポスト制度化」世代というのは運動に入ってこないらしい。運動にはネットワーキングやロビーイング、行政との交渉など経験やノウハウの蓄積があるのに、それが伝わらない。もったいないことだと思う。障害者自立生活運動のリーダー、中西正司さんが『自立生活運動史 社会変革の戦略と戦術』(現代書館、2014年)を、認定NPO法人市民福祉団体全国協議会の代表理事、田中尚輝さんが『社会を変えるリーダーになる 「超・利己主義」的社会参加のすすめ』(明石書店、同年)を書いたのも世代交代を意識してのことだ。

 わたしもNPOの理事長。世代交代は最大の課題だ。気がつけば後から誰もついてきていなかった、では哀しすぎる。(社会学者)

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