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北陸六味【社会学者 上野千鶴子さん】

オキナワンの当事者主権

写真:イラスト・田中聡美 拡大イラスト・田中聡美

 沖縄へ講演に出かけた。辺野古埋め立て工事が強行される直前のことだ。

 冒頭に、「玉城デニー知事のお誕生、おめでとうございます」と告げた。道半ばにして斃(たお)れた翁長雄志知事の遺志を継ぐ後継候補であり、沖縄の気持ちを代弁するひとだからだ。暗いニュースが続くなかで、久しぶりの明るいニュースだった。会場には翁長夫人も来ておられた。

 最近の講演では、ほとんど必ず『当事者主権』(中西正司・上野千鶴子共著、岩波新書、2003年)に触れる。「主権」とは、自分の運命を自分で決めることのできる、他に譲渡することのできない至高の権利。自分が自分の主人公、という意味だ。女も、障害者も、子どもも、この自己決定権をないがしろにされてきた。最近の介護業界では、高齢者の意思決定支援が唱えられるようになったが、それというのもお年寄りの意思より家族の意思が優先されがちな傾向があるからだ。

 地域の運命を地域の住民が自分で決める……ための県民投票を玉城知事が提唱したが、沖縄県下の自治体には温度差がある。返還予定の普天間基地がある宜野湾市は、県民投票に反対した。普天間の住民と辺野古の住民とは、対立関係に置かれたが、これは仕組まれた対立である。普天間返還は辺野古移設と引き換え、という二者択一を、安倍政権が沖縄県民に迫ったからだ。沖縄の基地負担の軽減を言うなら、県外移転も米軍の撤退も選択肢にある。その第3の選択肢に封をしたまま、あれかこれかを強いることで、沖縄県民のあいだに対立が生まれる。

 オキナワンを自称する復帰後生まれの若い世代がいる。復帰前を知らない彼らには、内地との自然な対等意識がある。だから「オキナワ、大好き」という観光客に向かって、「そんなに好きなら、基地も持って帰って」と言うのだ。日米安保条約を守りたいなら、そのためにコストを支払う必要があるなら、他の国民も沖縄県民と同様に痛みを分かち合え、と要求する。現地の歴史をよく知る人に聞いた話では、オキナワンはもともと、米軍統治下でアメリカが沖縄県民を日本人と区別して差異化するため採用した用語。あなたたちはジャパニーズから、オキナワンとして差別を受けたのだよ、日本統治に比べればアメリカ統治のほうがましかもしれない……と、分断統治の鉄則を貫いたためだ。そのオキナワンという用語を、今度はプライドを込め、復帰後世代が自称詞に使う。差別的な日本人と一緒にされたくないという愛郷心と、同じ国民としての平等感覚とがないまぜになったアンビバレントな用法である。

 前回沖縄で講演したのは14年、翁長知事が誕生する知事選の直前だった。その際「当事者主権」を紹介して、英語だと「Nothing about us, without us」という国際障害者運動の標語と同じ意味だよ、と伝えたときのことだ。質問の時間に、はいと手を挙げた女子高生がいた。「今日は辺野古からバスに乗って那覇まで来ました。『私たちについて私たち抜きに何ごとも決めないで』この言葉を得ただけでも、今日来た甲斐(か・い)がありました」と堂々と発言した。彼女は有権者になっているはずだ。どんな選択をしているだろうか?

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