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北陸六味【社会学者 上野千鶴子さん】

「起きた子」は眠らない

写真:イラスト・田中聡美 拡大イラスト・田中聡美

 この1月19日は、東大闘争のピーク、安田砦の落城からちょうど50周年だった。当時20代だった若者たちは70代になった。その1週間前の12日に、東大安田講堂を会場に、在宅医療に関わる医師たちによる「2019団塊・君たち・未来」と題するシンポジウムが開かれた。NPO法人在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワークの第25回全国の集いin東京2019の「プレ大会」と銘打たれたが、どうしても、この日・この場所でなければ、という執念が感じられた。東大も、よく会場を貸したものだと思う。

 なぜ在宅医が?と疑問を持つひともいるだろうが、東大闘争はもともと医学部闘争から始まったもの。参加者のなかには、当時戦闘的だった青医連(青年医師連合)のメンバーだったひともいるし、東大闘争に傷ついて、あれ以来安田講堂に入るのは人生で2度目だというひともいる。依頼したが、東大構内に入るのがイヤで断られたひともいるという。

 発言者は、団塊世代を中心に、在宅医療のパイオニアである黒岩卓夫、新田圀夫、堂垂伸治、苛原実、鎌田實など。おもしろかったのはどのひとも「50年前のあの日、わたしは……」から話が始まることだ。「あの日」からの50年間、自分が何をしてきたか、そしてそれがどう今日につながっているかを語る。

 50年前の「あの日」は、どのひとの人生にも重い影を落としている。よく全共闘世代は「ブル転」したと言われる。といっても、通じないだろうなあ。「自己否定」とか言っておきながら、卒業したらていよく大企業に就職して、ブルジョア転向した、という意味だ。大学進学率が今ほど高くなかった時代、大学生はエリートだったからだ。だが、わたしの知る限り、それはあてはまらない。あの当時、学生運動に参加した者たちは、その後の人生においても、草の根の環境問題や地域闘争、消費者運動や女性運動などに関わりつづけてきた。社会運動は「寝た子を起こす」と言われているが、「起きた子」は、それからの生涯においてもずっと寝ないのだ。

 印象的だったのは、主催者挨拶で「ぼくらは在宅医療を社会運動だと思ってやってきました」という発言だ。今でこそ、在宅医療は政府が診療報酬を手厚くして誘導する国策となっているが、それまでは割の合わない選択だった。わたしは彼らを「一周遅れのトップランナー」と呼んだことがある。医療の病院化や医師の臓器別専門化が怒濤のごとく進む時代にあらがって、地域に足をつけた地味な在宅医療をやってきた医師たちの実践が、実を結んだのだ。ふしぎなことに、在宅医療のパイオニアと言われるひとたちのあいだには、親も医家だという医師のジュニアが少ない。かれらは創業者精神を持った、ベンチャー起業家でもあった。

 あれから半世紀。2011年3・11は「寝た子を起こした」と言われた。原発事故後の国会前デモの波は退いたようにみえるが、いったん「起きた子」たちは、その後も寝たりしないだろう。「起きた子」たちのその後の人生は、どうなるだろうか。(社会学者)

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