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わかやま動物ウオッチング

108 共存のヒント 暮らしの中に

写真:シカの母子。懐中電灯で照らすと、驚いて一瞬こちらを凝視する=2月23日午後9時ごろ、那智勝浦町、松本さん撮影 拡大シカの母子。懐中電灯で照らすと、驚いて一瞬こちらを凝視する=2月23日午後9時ごろ、那智勝浦町、松本さん撮影

 前回、ジビエの取り組みを紹介しました。食材としての活用が広まれば、シカやイノシシの捕獲が促され農作物などへの被害を減らすことにもつながります。

 県内のニホンジカの推定生息数は3万1千頭(2009年度)で、農林業の被害額は7600万円(11年度)。県はシカの生息数を約10年前の約8700頭をめどに管理する計画です。シカはどんな場所に多く出没するのか県森林組合連合会の調査に同行しました。

 2月末、組合の谷関俊男さんと畑田和伸さんとともに、シカの目撃が多い那智勝浦町の調査地に行きました。シカは夜行性で昼間は山で休息します。明るいうちに痕跡を探すと水田に蹄(ひづめ)の跡や糞(ふん)を見つけました。林の縁にはけもの道。シカは山と農地とを行ったり来たりしているそうです。

 午後7時半。暗闇の中、ゆっくり車を走らせます。窓を開けて懐中電灯を照らすと遠い山裾にピカッと、二つの光。「シカです」と畑田さん。目の動きや幅でタヌキなどと区別します。

 立派な角のある2頭の雄と10メートルほどの距離で遭遇しました。あっと思った瞬間、かなたに跳び去る白いお尻。人家近くに出てきますが、臆病で警戒心が強いと実感しました。続いて4組の母子集団を見つけました。シカは秋に交尾し、春〜初夏に出産します。

 3時間ほどで約14キロのルートを調べ、確認した個体数は97頭。人家近くの農地に多数のシカが出没する実態がわかりました。地元の人は「子ジカが農地で食べることを学習する」と言います。

 シカが人里に出る背景に、個体数の増加や山の食糧不足、耕作放棄地の拡大などが考えられます。谷関さんは「シカが増えすぎると植物を食べ尽くし生物多様性が失われ、土壌流失も起こる」と指摘します。

 適切な生息数管理とともに求められるのは「森林環境の再生」です。県内で6割を占める人工林は植林後50年以上が経ち、伐採の適期を迎えています。手入れが進めば光がさして多様な植物が芽生え、野生動物の食べ物も豊かになります。

 地元の木を使い、地元の産物を食べる――。シカやイノシシと共存するヒントは、私たちの暮らしの中にあります。

(動物教材研究所pocket 主宰 松本朱実)

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