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わかやま動物ウオッチング

106 人の輪運ぶ コウノトリ

写真:電柱の上にいるコウノトリ=昨年11月4日、和歌山市内、グッサン提供 拡大電柱の上にいるコウノトリ=昨年11月4日、和歌山市内、グッサン提供

 昨秋から和歌山市内の休耕田に雄のコウノトリが来ています。日本産の個体群は絶滅しましたが、飼育下で増やしたものを兵庫県豊岡市で2005年から野生復帰させています。野外繁殖も進み、子孫が県内を訪れています。

 このコウノトリは昨年5月、京丹後の人工巣塔で孵化(ふか)した若鳥。個体番号「J0057」を示す足環が付いています。9月17日に和歌山市粟地区に飛来、同23日から同市船所地区に移りました。見守り続ける地域の方々に話を聞きました。

 船所には約0・8ヘクタールの休耕田があり、農薬をまかず一部は冬でも水が抜けないよう管理し、餌になる小動物がいます。田んぼではシマヘビやミミズ、バッタ、用水路ではフナやコイなどを食べます。

 夜のねぐらは高い電柱の上。コウノトリは本来、高い木の上で休息・営巣します。豊富な餌場と適当な休息場所があるので長くいるのでしょう。

 今冬の午後4時ころ、近所の10人ほどが集まり「コウちゃん(愛称)が空を旋回していた」と話しました。毎日、人が自然に集まり、様子を気にかけるそうです。「姿を見て励まされる。今まで疎遠だった人と会話が増え、地域が温かい雰囲気になった」

 私も電柱の上にいるのを見つけました。寒風の中のコウノトリは眩(まばゆ)い凜(りん)とした存在感がありました。この姿に魅(ひ)かれ、記録を撮り続けている通称「グッサン」という方が、屋根を工事する人を背後から見るコウノトリの写真を見せてくれました。好奇心が強く、時折、人家近くに来るそうです。

 でも地域の人たちは干渉せず見守り続けます。1月2日、風に煽(あお)られ高圧線に触れ、やけどを負って落下するハプニングがありました。でも冷静に事態を見守り、けがは自力で完治しました。兵庫県立コウノトリの郷公園の関係者も「野生復帰を目指しているので、給餌(きゅうじ)をせず一定の距離を保ってほしい」と話します。

 餌の状態や仲間の探索などで今後、移動する可能性があります。生物を育む農法を広げ餌環境を増やせば県内でも見る機会が増えるでしょう。そしてコウノトリの訪問は人の輪と心をつなぐことを、コウチャンが教えてくれています。

(動物教材研究所pocket 主宰 松本朱実)

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