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高校野球【第99回 全国高校野球選手権 和歌山大会】

チェンジ あのときから(2)

写真:「敗戦を生かすことができた」と話す稲谷颯人君=和歌山市吹上5丁目 拡大「敗戦を生かすことができた」と話す稲谷颯人君=和歌山市吹上5丁目

■ふがいない自分、鍛えた/桐蔭 エース・稲谷颯人君

 「お前は泣くな」。昨年の夏の和歌山大会1回戦。6―13で敗れた桐蔭の伊藤将監督(37)は、涙を流すエース稲谷颯人君に言った。

 当時、稲谷君は2年生ながら背番号「1」を背負い、先発のマウンドに登った。「先輩のために良い投球をしよう」。調子は決して悪くなかった。しかし、いざ試合が始まるとストライクが入らない。「何で入らんのやろ」。思い切って腕を振ろうと思えば思うほど本来の投球とはかけ離れ、四回途中で11点を失い降板した。試合後、ベンチ裏で涙を流す先輩を見て自然と涙があふれてきた。夏を終わらせてしまった自分がふがいなかった。

 「走っとけ」。新チーム始動後、投球練習から遠ざけられた。来る日も来る日も走り込み。稲谷君は当時を振り返って、「仕方ないな」と思いながらも「一番しんどい時期でした」。8月の新人戦もベンチを外れ、秋季大会県予選も2番手で登板したが長いイニングを投げることなく、マウンドを降りた。

 「投げたいという思いを持ってもらいたかった」と伊藤監督は言う。守りのチームで勝っていくために、軸となる稲谷君の成長が必要だった。だが、自分の悪いところと向き合うことのできない一面があると監督は感じていた。その思いが和歌山大会後の言葉にも込められていた。練習試合で良い投球ができても公式戦では力を発揮できないことが多い。大事な場面で力を発揮できないメンタル面の課題と向き合わないまま時を過ごし、「同じことを繰り返すことは避けたかった」。

 稲谷君にとってはつらい時期が続く。走りながら、「自分が投げて負けたら」と不安が脳裏をかすめることもあった。そんな時、あの夏の先輩たちが声をかけてくれた。「今は耐えどきや」「いつかよくなるから」。この人たちに悪い思いをさせたらあかん。「先輩たちからの声がなかったら辞めていたかも」と稲谷君は振り返る。

 秋季大会県予選が終わった後、伊藤監督が稲谷君を呼んだ。「一番練習しているところをチームメートに見せて、お前のために頑張ろうって思えるくらい頑張れ」。その言葉に「一からやり直そう」と決意した。元々は「だらけそうになるタイプ」だった稲谷君だが、チームメートも「こんなに頑張るやつだったっけ」と思うほど走り込んだ。全体練習中も別メニューでダッシュを繰り返し、とにかくみんなが練習している横で走る姿を見せ続けた。

 「チームで一番努力している人は」と3年生に質問すると、「稲谷」とみんなが口をそろえる。誰よりも遅くまで練習し、自分にも他人にも厳しくなった。体重は昨夏より10キロ以上増え、空振りをとったり、打球を詰まらせたりする場面も増えた。

 4月の春季大会県予選の1回戦。久々の公式戦で先発した稲谷君は走者を出しながらも決して崩れることなく、1点を守りきり完封。「もうマウンドは怖くない」と成長した姿を見せた。

 「あの期間がなかったら」と稲谷君は振り返る。投球練習ができず、メンバーからも外れた「一番しんどい時期」があったからこそ成長することができた。

 「周りがお前のために頑張ろうって思えるように」。今年は、その言葉通りの夏にするつもりだ。

(金子和史)

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