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高校野球【第99回 全国高校野球選手権 和歌山大会】

チェンジ あのときから(4)

写真:緊張した表情で背番号を受け取る那賀の選手=岩出市高塚 拡大緊張した表情で背番号を受け取る那賀の選手=岩出市高塚

■選ばれた自覚と責任 胸に/那賀 部員投票で登録メンバー

 6月中旬、校内の会議室にぞろぞろと集まる那賀の選手とマネジャーたち約50人。どこか落ち着かない様子で時間を持てあましていた。午後3時40分。高津亮監督(42)が来ると、一気に空気が張り詰めた。

 那賀では部員同士の投票で夏の大会のベンチ入りメンバーの20人中18人を決める。各ポジションだけでなく、高校野球を一生懸命やり、最も信頼されている選手を入れる努力・尊敬枠(17番)や、走塁や打撃、ベンチワークなど何かに秀でたスペシャリスト枠(18番)もある。

 きっかけは7年前だった。秋の公式戦で序盤から点を取り合う荒れた試合に。そんな中、一人の選手が死球を受け、交代せざるをえなくなった。誰を出したらいいか悩んだ高津監督は、主将を呼んで聞いた。「誰を入れたら落ち着くん」。主将が挙げた名前は監督の予想外の選手だった。言葉通りその選手を試合に出すと、「すーっと潮が引くように試合が落ち着いた」という。

 選手たちの話を聞いて、これだけ試合の流れはかわるのか。もっと選手たちの話を聞こう。そうして、投票制が始まった。

 「中学の時から一緒にやってきた」「3年間ずっと隣で頑張っているのを見てきた」。そんな選手間の人間関係の濃淡も票に影響する。しかし、投票制を導入してから、一度も同情票や学年票で選手が選ばれたことはない、という。「みんな夏に勝つためにどうしたらいいかを真剣に考えているから」と高津監督は言う。

 今年の投票は20分足らずで終わった。投票用紙をじっと見つめ、一番最後に提出した選手がいた。北貴行君(3年)は控えの最後の選手を誰にするか悩んでいた。自分か、ほかの選手か。力強い打球が打てると、新チームでは4番を打ってきた。しかし、6月初めの練習試合で肉離れを起こして離脱。投票の日も完治していなかった。「万全な状態じゃない自分が入るべきではない」「最後の最後まで試合に出る可能性を残したい」。色んな思いが交錯し、気づけば最後に。結局、16番の欄に自分の名前を書いて出した。「ベンチに入りたい。その気持ちを無視できなかった」

 川添聖弥主将(3年)は1番に前田凌成君(3年)と川村空也君(2年)のどちらの名前を書くか迷った。川添主将から見て、2人ともエースナンバーを背負う実力はある。だが、「夏は3年生の思いが強い」と前田君の名前を書いた。自身3回目の投票は「これまでで一番重みがあった」と振り返る。

 7月4日、背番号の発表の日。高津監督が順番に選手の名前を読み上げた。北君はきゅっと口を閉じていた。「16番 北」。「はい」と短く返事をして、大事そうに背番号を受け取った。

 「ほっとしました」。北君は笑顔を見せた。「試合に出たい」という気持ちに素直になって書いた自分の名前。「選ばれた自覚と責任を感じて、プレーで返していきたい」と力強く語った。

 川添主将が1番の欄に名前を書いた前田君は10番だった。前田君は「1番をもらえなかったのは悔しい」と話したが、一方で「みんなから信頼されて、メンバーに入れてもらったことがうれしい」と晴れやかな表情を見せた。

 枠が決まっている中で、書きたくても書けない名前がある。それだけに、選ばれたメンバーたちは試合に出られない選手の思いも胸にグラウンドに立つ。部員たちの思いがつまったメンバーで今年の夏も戦う。

(金子和史)

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