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連載:レンジャー便り

信仰が自然守った稲積島

写真:周参見湾の入り口に位置する稲積島。枯木灘側は岩肌が目立つ=すさみ町 拡大周参見湾の入り口に位置する稲積島。枯木灘側は岩肌が目立つ=すさみ町

 紀伊半島南部の西側海域は、「枯木(かれき)灘」と呼ばれています。黒潮の影響による厳しい波浪と速い潮流が特徴で、沿岸にはその影響による海食崖などの優れた海岸景観が広がります。枯木灘の沿岸を縫うように通過する国道42号を走り、すさみ町周参見地区が近づいてくると、海側にこんもりと丸く盛り上がった島、稲積島が見えてきます。

 稲積島にはスダジイをはじめとした照葉樹林が広がっており、暖地性植物群落として国の天然記念物に指定されています。また、オオタニワタリ、ハマセンダンなどの希少な植物、アヤムネスジタマムシなどの貴重な昆虫類も生息していることから、吉野熊野国立公園の中でも、現在の景観を厳正に保護することが必要な地域として特別保護地区に指定されています。

 稲積島に、なぜこれだけの優れた自然環境が残されているのでしょう。稲積島は周参見湾の入り口に位置することから、枯木灘の強い風と波から集落を守ってきました。周参見港は沿岸を航行する船舶の避難港として、重要な役割を担ってきました。稲積島があることで周参見地区は天然の良港となり、商港としても栄え、紀州藩の時代には口熊野(くちくまの)の行政の中心地ともなったのです。

 こうして集落と港を守る稲積島は、「神聖な島」として住民の信仰を集めてきました。島全体が山王王子社の境内となり、島の前の海中には鳥居が立っています。稲積島は鎮守の森として大切に守られてきました。先日、周参見漁港から船を利用し、稲積さんの枯木灘側の「姿」を見る機会に恵まれました。そこには周参見湾側のなだらかな斜面とは全く異なる、枯木灘の厳しい風浪にさらされて切り立った海食崖が広がる風景がありました。自然の力の大きさに改めて驚くとともに、稲積さんに守られてきた周参見の人々の暮らしをより実感をもって感じることが出来ました。

 「国立公園」と聞くと、人の手が入ったことの無い原生林や、険しい高山帯のような場所をイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。そのような大風景地もありますが、稲積島のように人の生活文化や歴史と密接に関わりながら守られてきた自然や、人の営みと相まって作られた自然も国立公園に多く存在します。自然を楽しみながら、地域の生活文化・歴史に触れ、より深い体験ができるのも、国立公園の魅力の一つです。これからも多くの方々に国立公園の魅力を感じ、楽しんでもらえるよう、工夫を重ねていきたいと思います。

(田辺自然保護官事務所・高橋優人)

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