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まちづくり講座・ウラマチぶらり【足立基浩のまちづくり講座】

「まちのこし」の挑戦

写真:湯浅町の街並みからはしょうゆの香りが漂う=湯浅町湯浅 拡大湯浅町の街並みからはしょうゆの香りが漂う=湯浅町湯浅

 3月27日に東京・日本橋にて、湯浅町に関するシンポジウムが開催された。昨年、日本遺産に同町が認定されたことを記念するシンポジウムである。日本遺産は地域の歴史的な文化・伝統の魅力を「ストーリー性」の観点から評価し、文化庁が認定するもの。湯浅町は「しょうゆ醸造のストーリー」が評価された。

 私もまちづくりの分野からコメントを求められ、パネリストとして出席した。うれしいことに、私のゼミの元学生であり現在はフリーアナウンサーとして活躍する川田裕美さんが司会を務めた。漫画家の里中満智子さん、日本文学研究者のロバート・キャンベルさんらも参加した。ディスカッションは湯浅の魅力、特に食の魅力に関する議論が多かった。確かに、湯浅町には実に様々な魅力が存在する。

 古い街並みがのこる重要伝統的建造物群保存地区や、13世紀に起源をもつといわれるしょうゆ醸造発祥の地としての歴史・文化、そして豊かな自然に恵まれたミカンやしらすなどの食産物。わずか人口1万人のまちに、こうした大切なものがすべて残っている。壊すのは簡単だが、残すのは実に難しい。これまでの住民、行政の努力に敬意を表したい。

 「まちおこし」や「まちづくり」の重要性が声高に叫ばれる昨今、実はより重要な視点として「まちのこし(残し)」という言葉がある。現在は温泉街として名だたるブランド力を有する大分県由布市は今から半世紀ほど前、隠れ家的な温泉街であった。バブル経済の荒波が押し寄せる頃、町をゴルフ場にしようという計画が浮かんだが、住民らが反対し、自然を守った。「秘境」が開発されずに「のこされた」由布院の温泉街はその後、全国的な脚光を集めることになる。

 3月29日、湯浅町は古い商家を改修し、また地域全体を「博物館」にみたてた「湯浅まちごと醤油博物館」を完成させた。まちをまるごと「博物館」にするという構想は、フランスに起源をもつといわれる「エコミュージアム(町のすべてが博物館)」を思わせる。フランスの歴史あふれるまちの一部では、住民が「学芸員」の感覚で観光客をもてなす。住民がまちに誇りを持ち、一体となって地域を「残す」のである。

 湯浅町のしょうゆの香り漂う空間は、観光客を呼び、街を元気にすることにつながるであろう。一方で、基調講演を行った里中先生のご発言にもあるように、「あまり観光客でごった返すような街になってほしくない。かざらない湯浅町が魅力だ」との言葉もうなずける。今後はこうした「活性化」と「地元の普通の生活の維持」の両立を探りながら、新しい時代のステップを踏むことになるであろう。これからも住民主体の「まちのこし」を実践してほしい。

(和歌山大学経済学部教授)

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