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高校野球【夏へのエール 高校野球100回】

日本野球 さらに磨きを 下

写真:佐山和夫さん 拡大佐山和夫さん

■ノンフィクション作家 佐山和夫さん

 和歌山中学(現・桐蔭高校)の「ボールボーイ」として学生野球の原点を見てきた。日米の野球史に精通するノンフィクション作家の佐山和夫さん(81)。日本野球の根底には、高校野球が育んできた精神があると説く。

 父親は、和歌山中学の教師。校内の官舎に住み、子どもの頃から練習を間近に見た。

 終戦直後、国民学校(小学校)3年のときでしょうか。野球が再開したということが大変な喜びだった。自分の家の裏庭がグラウンド。裏の砂山にファウルボールが飛んでいく、それを取るのが僕の仕事で、いつしか毎日やっていましたね。

 自主的な練習の姿というのが、一番記憶に残っています。監督はいないはずはなかったと思うのですが、記憶にはありません。生徒が練習も試合も全部仕切っているんです。互いに励まし合いながらノックをしている。そういう風にして培ったチームワークっていうのは非常に大きかったと思いますね。今となってはあれが当然の学生野球の姿だったなあと思って。

 もしも高校野球というものが教育のためにあるということならば、一番大事なのは自分の判断力を育てるということです。ピンチに陥ったとき、チームメートがみんな集まり、勝負しようと決めたとしますね。それで仮に打たれて負けても、自分たちの判断より相手の力が上回ってたということですから、勝とうが負けようが納得はできると思う。

 ピンチにいちいち監督を見て「歩かせろ」「はい歩かせます」では、ここというときに誰かの指示によって自分の行動を決める習性ができてしまう。その方がよほど怖い。人生の苦難の方が野球よりもっとつらいですから。

 40代半ばで「史上最高の投手はだれか」を著し、作家として歩み出した。アメリカに実在した黒人リーグ「ニグロリーグ」の伝説の投手、サチェル・ペイジの人生を描いた。

 ペイジを最初に書いたとは、よほど野球が好きだったんでしょうね。いったん「野球の木」に登ってしまったら、下りられなくなってしまった。気がついたら35年。ノンフィクションだからといって社会悪をあばくだけじゃなくて、野球を窓にしてみたらアメリカが描けるなって。ペイジを書くことでアメリカの人種差別がわかる。アメリカ社会の諸相が野球一つで十分わかります。

 アメリカの野球を調べてみたからこそ、日本の高校野球が果たした特別な役割についてもよくわかりました。基本に忠実で、フェアで、チームワークを大切にする。これが日本野球の根底になっているのです。

 1915年、全国大会を開くときに、様々あった大会を一つにまとめ、ルールを決めた。試合前には両軍がホームプレート前に並んであいさつをする。フェアプレーを誓い合うんだけど、相手がいてこそ一つのゲームができるわけで、相手を尊重してやりますよと。これは武道ですよ。こんなことはアメリカもやっていない。第1回大会からこれを始めたのですね。全国民が野球とはこうしてやるのかと思ったわけです。

 日本の野球は世界でも冠たるもので、これくらい立派にやっている国はないと思います。高校野球は日本文化の一つの象徴として存在している。球児のみなさんはそれにますます磨きをかけて、さらに立派な野球にしていただきたいと思います。勝つか負けるかはどうでもいい。もっと大切なものを大事にしてほしい。

◎さやま・かずお

 1936年生まれ。和歌山市出身、田辺市在住。田辺高校から慶応大学へ進み、高校教師などを経てノンフィクション作家に。著書に「史上最高の投手はだれか」「野球から見たアメリカ」などがあり、日米の野球史に詳しい。日本高野連顧問も務める。

 次回は番外編として、春夏連覇を果たした箕島高校の元監督、故・尾藤公(ただし)さんの教え子たちによる座談会を掲載します。

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