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06月25日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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写真:慶風の奴田幸希君 拡大慶風の奴田幸希君

■自分変えた最後の夏/慶風唯一の3年生・奴田幸希君

 大差がついた五回表。守っていた慶風の遊撃手、長島功樹君(2年)が足をひねり、治療のためベンチにさがった。選手が11人の慶風だが、この日は故障者と体調不良者が出て9人。1人欠けても試合が続けられなかった。「何としても出てきてくれ」。慶風唯一の3年生、奴田(ぬた)幸希君は左翼から祈っていた。長島君は治療を受け、試合は続行されたが、5回コールド負け。整列前、本塁近くで奴田君は長島君と短く握手を交わした。「最後まで試合させてくれてありがとう」

 慶風では最初で最後の公式戦――。奴田君にとってそんな試合だった。奴田君は昨年の大会前に慶風に転校。だが、入部当時は全く練習に身が入らず、練習もさぼりがち。それが変わったのは今年の2月ごろ。「前の学校の選手に成長したところを見せてやらんか。最後の夏やろ」。練習中にコーチとグラウンドのベンチで向かい合った。「あれで気持ちが変わった」と奴田君は振り返る。

 奴田君の変化と同時にチームも変わった。「奴田さんのために1勝」が、いつしかチームの合言葉に。ノックでも声が出るようになり練習の雰囲気も一変した。主将の西畑勇杜君(2年)は「奴田さんがチームを変えてくれた。みんなが尊敬する先輩」と話す。

 夏の1勝に向けて強豪、日高中津に挑んだ初戦。一回は無失点で抑えたが、二回に2点、三回に9点。「気にするな。自分たちの野球していこうな」。ベンチで奴田君は声をかけ続けた。三回には、奴田君の安打などで満塁の好機を作ったが得点はできず、大差で敗れた。

 届かなかった1勝。それでも奴田君は「自分が変われたのは慶風があったから。ここで野球ができたことにありがとうと伝えたい」。すがすがしく語った。

(片田貴也)

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