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和歌山とアヘン

不況救った「白い花の女神」

写真:雪が降ったように一面白色だったケシ畑=1937年5月、湯浅町 拡大雪が降ったように一面白色だったケシ畑=1937年5月、湯浅町

写真:ケシが栽培されていた頃を思い出す川瀬弘さん=湯浅町青木 拡大ケシが栽培されていた頃を思い出す川瀬弘さん=湯浅町青木

写真:ケシ栽培について、かつて近所のお年寄りたちがしていた話を思い出す栗山冨宏さん=広川町井関 拡大ケシ栽培について、かつて近所のお年寄りたちがしていた話を思い出す栗山冨宏さん=広川町井関

和歌山とアヘン(上)

 「上から見ると真っ白だった」。湯浅町で生まれ育った川瀬弘さん(86)は子ども時代を懐かしんだ。5月から6月ごろ、有田郡や現在の由良町付近はケシの白い花に埋め尽くされ、まるで雪が降ったかのようだったという。一方、子どもが近づくことは禁じられていた。「ケシを育てているところには入るな、と言われていたね」

 広川町でミカン農園を営む栗山冨宏さん(82)は戦前のケシ栽培について、親や近所の人たちが「百円札を見たければケシを植えろ」と言っていたことを覚えている。当時の100円は、近年の数万円ほど。栗山さんが住む旧南広村(現・広川町)が、県内でも特に栽培が盛んだったと聞かされていた。

   ■   ■

 和歌山でケシは、稲の裏作として田んぼに植えられ、5〜6月に収穫の時期を迎えた。ケシの果実が未熟な時、表面に傷を付けると出てくる白い液を乾燥させると、「生アヘン」と呼ばれる固形化したものができる。その後、水を加えたり、加熱したりするとアヘンになる。アヘンの吸煙は習慣になりやすく、中毒になることも多かった。

 生アヘンの中には、鎮痛作用のあるモルヒネが成分として含まれ、医薬品としても使われる。ただ、使い過ぎると依存を生む可能性がある。また、モルヒネからは依存性がさらに強い麻薬、ヘロインを生み出すことができる。

   ■   ■  

 日本近現代史を研究した故江口圭一・愛知大教授の著書「日中アヘン戦争」によると、国内でケシの栽培が始まったのは明治時代後期。日本は、アヘン吸煙が根付いていた台湾を統治する際、アヘン中毒者へ対応する策として専売制を始めた。その一環として国内で栽培が始まり、アヘン価格の高まりなどもあり、大阪府を中心に栽培が盛んになったという。

 和歌山県が戦前にまとめた資料によると、県内では1915年に藤田村(現・御坊市)で栽培が始まった。その後、麦などと比べて利益が多いことなどを理由に、有田郡を中心に栽培面積が広がった。温暖な気候も栽培に適した。「副業として好箇の罌粟(けし)の栽培」「罌粟の花――それは本県の副業として咲いた美しい花の一つである」と記されている(「和歌山県特殊産業展望」。以下「展望」)。

 県史によると、32年には作付面積が全国1位になり、和歌山は日本でも有数の栽培地になった。広川町史ではケシについて、第1次世界大戦後の不況にのみ込まれた農民たちを救った存在として、「白い花の女神」と表現。戦前に栽培を手伝っていた川瀬さんは「米の収入だけで生きるのは大変だった」と語った。

 当時の資料によると、製造されたアヘンはすべて政府が買い上げていたという。これも、農民たちにとって生産に踏み出す大きな要素だった。「罌粟栽培の背後には政府の大きな手が保証されている」(「展望」)。一方、生み出されたアヘンは、日本の海外侵略とも結びついていた。(引用文は新字や現代仮名遣いに改めた)

   ◇   ◇

 和歌山県はかつて、日本でも有数のケシ栽培地だった。ケシは中毒性のあるアヘンなどの原料にもなる。栽培を通じて戦争ともかかわりがあった。和歌山のケシ栽培と、戦争前後の日本の歴史をたどった。

(この連載は藤野隆晃が担当します)

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