メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

10月15日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

それぞれの3.11

駆け込める「家」続ける

写真: 拡大

写真:子どもたちと全力で遊ぶ藤原さん(左)=岩手県大槌町、寺尾佳恵撮影 拡大子どもたちと全力で遊ぶ藤原さん(左)=岩手県大槌町、寺尾佳恵撮影

写真:夢ハウスに並ぶ子どもたちの書き初め=岩手県大槌町、寺尾佳恵撮影 拡大夢ハウスに並ぶ子どもたちの書き初め=岩手県大槌町、寺尾佳恵撮影

  【寺尾佳恵】2月上旬、震災による巨大津波と火災で壊滅的被害を受けた三陸沿岸の岩手県大槌町に入った。震災半年後の2011年10月に取材で訪れて以来だ。

  4年半前、津波でわずかに残った住宅とコンクリートの家の土台がむき出しになっていた市街地は、きれいに片付けられ広大な更地となっていた。高台からは穏やかな海が見渡せた。

  同町安渡地区の高台の一角に、「子ども夢ハウスおおつち」はある。山口市や防府市などでデイサービスセンターを運営する作業療法士の藤原茂さん(67)が13年4月に始めた支援施設だ。

  津波被害を免れた2階建ての一軒家。放課後になると、10人程度の子どもたちが集まってくる。震災で肉親を亡くした子、いまだ仮設住宅で暮らす子、不登校やつらい悩みを抱える子もいる。

     ○     ○     ○

  萩市出身の藤原さんが支援を始めたきっかけは、震災で亡くなった人の遺体を復元し、納棺するボランティアを続けてきた復元納棺師の笹原留似子(るいこ)さん(43)との出会いだった。

  大槌町などで活動していた笹原さんから、仮設住宅でつらい思いをしている子どもたちがいると聞いた。特に胸に響いたのが、震災翌年、一人の中学生が、津波の犠牲になった両親の遺骨を抱いて自ら命を絶ったという話だ。

  藤原さんの心には「困ったときになんで駆け込める場所がなかったんだ」との思いがあふれた。「悩んでいる子がいればすぐに飛び込んでこられる家をつくろう」。笹原さんと意気投合した藤原さんは、すぐに大槌町に家を借りることを決めた。

  思った以上に子どもたちの心は傷ついていた。遊んでいても粗暴に振る舞ったり、ものを投げつけたり。毎月のように「夢ハウス」に足を運び、数日間滞在する藤原さんを呼ぶときは「くそじじい」。目を見て話をしない子や話しかけても無視する子もいた。

     ○     ○     ○

  変化が見え始めたのはここ1、2年のことだ。

  管理者として常駐する吉山周作さん(30)は「少しずつ落ち着いてきた。言うことを聞かず片付けもできなかった子が、小さい子の面倒をみるようになりました」。子どもたちと真正面から向き合い、全力で一緒に遊ぶ藤原さん。いつの間にか「くそじじい」から親しみを込めて「くっそー」と呼ばれるようになった。

  一方、5年の歳月は、町も子どもたちの生活環境も徐々に変えている。

  地域の人たちの協力で「夢ハウス」近くにできた「すりきず公園」は、かさ上げ工事に伴って今年1月に解体。今春には「夢ハウス」の移転も決まった。進級や進学、仮設住宅から新しい家への引っ越しも進み、環境の変化についていけない子や、家が遠くなり「夢ハウス」に通いづらくなった子もいる。

  それでも、大槌町に通い、「何があっても続けていく」と言う藤原さんを突き動かすのは、「目の前にいる子を放っておけない。気になってしょうがない」という思いだ。

  「『夢ハウス』がなかったら私、死んでた」

  「つらいことは『くっそー』にお話しするんだ」

  子どもたちが時々ぽろっとこぼすそんな言葉に、吉山さんや笹原さんは「家以外に落ち着ける場所があってよかった」「子どもたちを支える大きな存在として作れて良かった」と胸をなでおろす。

  課題は運営費の捻出だ。寄付金による運営で1億円を目標に募ってきたが、集まったのは約5千万円にとどまる。引き続き寄付を募りながらも、収入基盤の安定化に向け、学童保育への移行を模索する。

  同町はまだ復興途上にある。「復興はそう簡単にはいかない。まして子どもの心の復興には時間がかかる」と藤原さん。今月もまた、「くっそー」を待つ子どもたちに会いに行く。

PR情報

ここから広告です

山口総局から

県内の主なニュース、身近な話題などを更新しています。情報やご意見をメールでお寄せください。メールはこちらから
朝日新聞DIGITALの問い合わせは0120-383-636(平日9〜21時、土曜9〜18時)。

朝日新聞 山口総局 公式ツイッター

注目コンテンツ

  • 写真

    【&BAZAAR】音量絞っても音がリッチ!

    人気のBT&重低音モデル

  • 写真

    【&TRAVEL】中田英寿 福島を旅する

    有機栽培の米作り〈PR〉

  • 写真

    【&M】男は女におごる「べき」

    そう考えていたつまらぬ理由

  • 写真

    【&w】江ノ電眺めながらジェラート

    鎌倉から、ものがたり。

  • 写真

    好書好日「人形メディア学」って何?

    早稲田大の大人気講義が本に

  • 写真

    WEBRONZA遠心化する安倍政権

    今日の編集長おすすめ記事

  • 写真

    アエラスタイルマガジングランドセイコーの新作時計

    王道かつ究極のクオーツ<PR>

  • 写真

    T JAPAN日本映画の顔を悼む2作が公開

    樹木希林さん、大杉漣さん追悼

  • 写真

    GLOBE+なぜ私は紛争地に行くのか

    MSF看護師、白川優子さん

  • 写真

    sippo猫の最期にはサインがある

    腕の中で静かに見送るために

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ