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 東京都知事選で「脱原発」を争点化しようとした主役は、細川護熙元首相(76)を支えた小泉純一郎元首相(72)だった。一つのテーマに絞って選挙を戦う小泉氏の「ワンイシュー(単一争点)選挙」はかつて首相の座を勝ち取り、「郵政選挙」で自民党を圧勝させた時と同じ手法だ。だが、今回は民意のうねりを起こせなかった。なぜだったのか。

■原発なじまず

 「残念な結果ですが、これからも『原発ゼロ』の国造り目指して微力ですが努力を続けてまいります」。9日夜、都内の細川氏の事務所。細川氏は記者会見で、小泉氏から寄せられたファクスを読み上げた。手書きの1枚紙に縦書きで7行。小泉氏の悔しさがにじんでいた。

 東京が記録的な大雪となった選挙最終日の8日夜、激しい雪が吹きつける中、小泉氏はJR新宿駅前で選挙カーの上に立った。17日間の運動期間のほぼ全てを細川氏の応援に費やした総仕上げだった。

 「原子力を基幹的エネルギーにする勢力と、原発なしで発展しようという勢力とのせめぎあいが今、始まっている」。真っ白な傘の列に向かい、小泉氏は叫んだ。14分間の演説内容は「原発ゼロ」一色で、告示以降変わらない。首相在任中の9年前に自民党を大勝に導いた郵政選挙と同じで、原発推進派を「抵抗勢力」に見立てた。

 自らの政権で引き立てた「弟子」の安倍晋三首相についても、名指しこそしなかったが、8日の演説で「原発再稼働させようという動きが顕著になっている。これは止めなきゃならない」と強く牽制(けんせい)した。

 小泉氏は2001年の自民党総裁選で「自民党をぶっ壊す」と訴え、首相の座に就いた。05年の総選挙では「郵政民営化、是か非か」と民意を問い、自民党を圧勝に導いた。その再現を狙った今回のテーマが「原発ゼロ」だった。

 だが、今回は思惑通りには進まなかった。報道各社の序盤の情勢調査で、細川氏は舛添要一氏(65)に軒並み水をあけられた。街頭演説では多くの聴衆が集まり、拍手も起きるが、途中で離れる人も多かった。

 小泉氏は1日夜、選挙戦の感触を聞いた朝日新聞記者に「どうして、あんな調査結果になるんだ。(自分の演説に)あれだけ集まって反応しているのにおかしいじゃないか」と首をかしげた。

 なぜ「原発ゼロ」のワンイシューが有権者に届かなかったのか。