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 「私は殉死(じゅんし)という言葉を殆(ほと)んど忘れていました。平生使う必要のない字だから、記憶の底に沈んだまま、腐れかけていたものと見えます。妻(さい)の笑談(じょうだん)を聞いて始めてそれを思い出した時、私は妻に向ってもし自分が殉死するならば、明治の精神に殉死するつもりだと答えました。私の答も無論笑談に過ぎなかったのですが、私はその時何だか古い不要な言葉に新らしい意義を盛り得たような心持がしたのです。

 それから約一カ月ほど経(た)ちました。御大葬(ごたいそう)の夜私は何時(いつ)もの通り書斎に坐(すわ)って、相図(あいず)の号砲(ごうほう)を聞きました。私にはそれが明治が永久に去った報知の如く聞こえました。後で考えると、それが乃木大将(のぎたいしょう)の永久に去った報知にもなっていたのです。私は号外を手にして、思わず妻に殉死だ殉死だといいました。

 私は新聞で乃木大将の死ぬ前に…

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