超人的な記憶力と論理的思考力で、非人間的な軍隊組織に抵抗する兵士を描いた長編小説「神聖喜劇」で知られる作家の大西巨人(おおにし・きょじん、本名巨人〈のりと〉)さんが12日午前0時半、死去した。97歳だった。故人の遺志により葬儀は行わない。長男は作家の赤人(あかひと)さん。

 政治や差別問題にも筆をふるい、鋭い風刺で社会の問題点を突いた。約25年かけて1980年に完成した「神聖喜劇」は、主人公の陸軍2等兵が軍隊という強大な権力機構に独りで向き合い、上官らと渡り合う姿を描いた。松本清張や埴谷雄高らの支持を得た。原作にした漫画も出版され、2007年に日本漫画家協会賞大賞を受賞した。

 福岡市生まれ。九州大法文学部中退後、新聞社勤務を経て、召集で対馬要塞(ようさい)重砲兵連隊に入隊。戦後、福岡で「文化展望」の編集にあたり、日本共産党に入党。52年に上京、新日本文学会常任委員となった。評論「俗情との結託」(52年)で野間宏の「真空地帯」を大衆追従主義と批判し、野間や宮本顕治らと論争。その後、共産党と絶縁状態となり、72年に新日本文学会を退会した。

 小説に、労働運動の堕落を告発した「天路の奈落」、評論集に「戦争と性と革命」「巨人批評集」、朝日ジャーナル誌での連載をまとめた「巨人の未来風考察」などがある。

 遅筆、寡作で知られたが、晩年に「深淵」「縮図・インコ道理教」「地獄篇三部作」などの作品を発表し続けた。

 赤人さんによると、昨年暮れに肺炎で入院した後、自宅で療養していたという。