慰安婦問題特集 3氏に聞く

 慰安婦問題の主要な争点は、官憲による組織的、暴力的な強制連行の有無と、慰安所における慰安婦たちの生活が「性奴隷」と呼べるほど悲惨なものだったか否かの2点に絞られよう。

 政治的、国際的次元に波及したこともあり、論争は必ずしも決着していないが、二十数年にわたり慰安婦報道を終始リードした観のある朝日新聞が、遅ればせながら過去の報道ぶりについて自己検証したことをまず、評価したい。

 関係者は、6月20日に公表された河野談話をめぐる政府の検証報告書を上回る関心と期待で読み通すのではあるまいか。

 今回の検証ぶりについて私なりに個別の論点を取り上げてみたい。慰安婦問題の初期イメージを形成し、その後の論調を制約したのは、1992年1月11日の朝日新聞かと思う。「従軍慰安婦」と題した用語解説に「主として朝鮮人女性を挺身隊(ていしんたい)の名で強制連行した。その人数は8万とも20万とも」(傍点は秦)とある。翌日の社説でも同趣旨を繰り返した後、過ちを率直に償おうと呼びかけ、解決の方向性まで社説として示したのだ。

 これほど誤認と誤報の多い記事は珍しいが、他のメディアが追従したこともあり、結果的に、当時の河野洋平官房長官が強制連行を認めて謝罪し、アジア女性基金を創設して元慰安婦たちに「償い金」を給付する路線が実現してしまう。

 今回の検証では、当時の情報不足に起因するとして挺身隊との混同は認めたが、総数と民族別内訳は不明としている。

 強制連行の有無については、済州島における慰安婦狩りを証言した吉田清治を16回も紙面に登場させたが、虚言らしいと判明した93年以降は起用をやめ、強制連行の4文字も「なるべく使わないようにしてきた」と強調した。

 それでも、前回の検証(97年3月31日)では吉田証言に関して「真偽は確認できない」と抑え気味だったが、今回は「虚偽だと判断し、記事を取り消します。当時、虚偽の証言を見抜けませんでした」と改めた。謝罪の言がないことに不満の人もいようが、画期的だと評価する人も多かろう。

 しかし、強制連行を根拠づける唯一の証言だった吉田証言を否定しながら、中国やインドネシアで戦犯裁判にかかった命令違反や個人犯罪の数例を引いたり、慰安所での「強制」や「軍の関与」を強調したりして、「朝日新聞の問題意識は、今も変わっていない」とあいまいに逃げてしまったのは惜しまれる。

 その関連だろうか、前回の検証では米軍がビルマで捕虜にした朝鮮人慰安婦たちの尋問報告から、慰安婦の置かれた境遇について「一カ月三百―千五百円の稼ぎを得て(中略)『都会では買い物も許された』」と引用したくだりを今回は落としてしまった。

 付け加えると、彼女たちの稼ぎは兵士の数十倍という高収入で故郷へ送金していたし、廃業帰国や接客拒否の自由もあった。奴隷とは言いかねるのに、なぜか国際常識化しかけている性奴隷説に朝日は追随しようとしているかに見える。

 冒頭で述べた2大争点を1勝1敗で切り抜けようとする戦略的配慮なのか。

 皮肉にも韓国では6月25日に元米軍用慰安婦122人が、性奴隷とされたことに補償と謝罪を求め、韓国政府を相手に提訴した。他にも、韓国軍用慰安婦やベトナム戦における性犯罪を追及する声もくすぶる。

 「自分のことは棚に上げ、他を責める」のは国際情報戦の定石とはいえ、日本も反撃姿勢に転じればよいのではないか。(寄稿)