米コロンビア大教授(日本近現代史)

 慰安婦問題が世界的な注目を集めていることを理解するために、三つの観点から考えてみたい。

 第一に、慰安婦は国際法の分野で女性の権利侵害の歴史的な実例として1990年代から広く言及されてきた。ボスニア紛争などで起きた大量虐殺と集団レイプは、98年に合意された国際刑事裁判所の設立に影響を与え、レイプや強制売春は人道に対する罪として国際法のもとで裁かれるようになった。国際法の文献で慰安婦が第2次大戦中の性的犯罪として触れられるのは通常のこととなり、慰安婦問題は女性の権利に関わる国際的問題となった。

 NGOや女性団体の活動が拡大し、その国際的な協力が飛躍したことがもう一つの原因だ。韓国では80年代に始まり、日本の女性活動家たちが加わった。90年代にほかのアジア諸国と韓国系の米国人やカナダ人が声を上げるようになった。慰安婦問題は90年代の米国でのいわゆる「アイデンティティー・ポリティクス」の一部となり、米国の議会で日本政府に賠償と謝罪を求める決議が繰り返されてきた。

 政府レベルでも重要な主題となった。2011年の韓国憲法裁判所の決定は、元慰安婦らへの個人補償が日韓請求権協定の例外にあたるか、韓国政府が日本政府と交渉しないことを違憲とした。これを機に、韓国政府は日本政府に対してだけではなく、ニューヨークやジュネーブの国連機関を通じて国際社会に慰安婦問題をアピールしている。国連規約人権委員会は今年7月、日本政府に元慰安婦への謝罪と賠償、戦中の慰安婦制度の調査を勧告した。

 この25年で、慰安婦と女性の権利に関する世界の考え方が変わった。日本の政治家が「強制連行を裏付ける公文書は見つかっていない」といった発言を繰り返すと、世界中の反感を引き起こすことになる。米国で慰安婦の碑や像が増えつつあることはその一例だ。