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 ビジネスや働く人にとってのヒントをお聞きするインタビュー「異才面談」。今回は、糸井重里さん(66)です。

 ――「ほぼ日(にち)」とも呼ばれるウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」をみると、手帳やタオル、カレーのスパイスなどのオリジナル商品を、幅広く扱っていますね。糸井さんは、売る名人なのですか。

 「売る名人じゃなくて、売れるに決まっているものをつくっています。売れるものを探し、売れるかどうか、常に自分に問いかけています」

 ――数十万部が売れている「ほぼ日手帳」は、利用者の声を集め、毎年改良を重ねているんだとか。

 「使う人に喜んでもらえるか、考え抜く。喜ぶ姿が光景として浮かびあがらない商品は、ダメですね」

 ――そこに、秀逸なキャッチコピーをつける?

 「製品ができてからお客さんの手に渡るまでは、長いドラマがある。広告屋は売るための助け舟を出すのですから、どこかで手伝うことはできます。でも、限界を感じたのです」

 ――限界、ですか。

 「自分が薦めたい商品ならいい。でも、もっと改善できるはず、なんて思ってしまうと、納得して商品を語れない。だからコピーライターはやめました」

 ――えっ!

 「エルメスにキャッチコピーはないですよね。よいコピーをつくることと、売れるものをつくることは別。よくないものをコピーで売るなんて、やめたほうがいい」

 ――1980年代に「おいしい生活。」といった数々の有名コピーを世に送り出した糸井さんなら、コピーだけで売ることもできそうなのに。

 「お客さんは、何が欲しいのか、わかっていないことも多い。だから、つくり手から提示する。自分に問いかけ、売れるに決まっているものを探すんです」

 ――優れたものをつくり、お客さんの喜ぶ顔が見える。それだけで、本当に売れるのですか。

 「いや、売れますよ。見せる場所さえあれば。特産品を地元で売っても、山奥に自動販売機を置くようなもの。お客さんはいないですよね。そうではなくて、いちばん競争の激しい所で売る手段を考えればいい。高級な宝飾品も、お店と、橋の下で段ボールに詰めて売っているのでは印象が違う。商品環境は大事です」

 ――糸井さんは東日本大震災が起きた2011年の11月、「ほぼ日」の支社を宮城県気仙沼市に設立しました。地元の女性と協力を重ね、手編みした7万~19万円台のセーターが順番待ちと聞き、驚きました。