出産の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩(ぶんべん)。日本でも関心は高まっているものの、選択する妊婦は、欧米と比べて極端に少ない。専門医や正確な情報の不足に加えて、「産みの苦しみ」を美徳とする文化も影響しているようだ。

■体力を残し「喜ぶ余裕」

 「赤ちゃん、早く出ておいで」

 名古屋市北区の平竹クリニック。5月18日、第2子の女児を出産した加藤有美さん(37)は、分娩台の上で赤ちゃんに話しかけた。

 陣痛がきて、麻酔を始めてから約5時間、痛みはほとんど感じない。「はい、いきんで」という助産師の指示にタイミング良く応じることができ、無事出産。痛みだけでなく、体力の消耗も少なかった。

 「第1子の時はぐったりして、息も切れ切れだったけど、今回は赤ちゃんを抱いて『ああかわいい』と喜べる余裕がありました」

 第1子も同院で出産した。陣痛の痛みは想像以上に壮絶だった。「安産でしたね」と言われたが、「もう、こんな痛みは経験したくない」と思い、平竹貫二院長(46)に相談。院内で開かれる無痛分娩の教室に参加し、手法や安全性について学んだうえで選んだ。

 細い管を背中の脊髄(せきずい)付近にある硬膜外腔(こうまくがいくう)に入れ、そこから麻酔薬を注入して下半身の痛みを和らげる。麻酔による副作用で、重い合併症が起きるケースは数万人~数十万人に1人という。