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 太平洋を望む東北の海岸線で、防潮堤の建設が進んでいる。国土交通省によると、岩手、宮城、福島の3県で総延長約400キロ、総工費は1兆円ほど。津波への備えとはいえ、徐々に姿を現す巨大なコンクリートの壁に、住民からは戸惑いの声も上がる。

 防潮堤の高さは、理論的にはじき出された。数十年から百数十年おきに起こる大津波の高さを、過去にその地域を襲った津波を参考に予測。津波のせり上がりを考慮して1メートル分高く設計された。

 ただ、防災の観点で理論的にはじき出した高さに、住民がすべて納得しているわけではない。

 宮城県南三陸町寄木(よりき)地区の高橋七男区長は「壁をそこまで高くしなくても、命を守る避難路と避難場所の整備で十分」と語る。「海辺に住んでいる人間は津波を覚悟している。多少の被害があっても、海の見える風景と、その恵みを受ける暮らしを孫に残したい」

 今回の取材で、宮城県や岩手県の防潮堤の建設現場をいくつも訪れた。住民からは「海がまったく見えない」「高台移転するのに何を守るのか」「そこまでの巨費を投じるなら、ほかの復興事業にお金を回した方がいいのでは」といった不安や疑問の声を聞いた。

 国交省によると、3県で防潮堤が計画されているのは594カ所。そのうちの3割、約180カ所で、住民の声を受け、高さや位置の見直しが行われた。地元と合意していないのは5%の28カ所だという(6月末現在)。(福留庸友)

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