【動画】ノーベル物理学賞の梶田隆章氏が会見=金川雄策撮影
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 スウェーデン王立科学アカデミーは6日、今年のノーベル物理学賞を、東京大宇宙線研究所長の梶田隆章教授(56)ら2氏に贈ると発表した。梶田さんは岐阜県にある装置「スーパーカミオカンデ」で素粒子ニュートリノを観測、「ニュートリノ振動」という現象を初めてとらえ、重さ(質量)がないとされていたニュートリノに重さがあることを証明した。宇宙の成り立ちや物質の起源を解明するのに大きな影響を与えた。

 日本のノーベル賞受賞は、5日に医学生理学賞が決まった大村智・北里大特別栄誉教授に続き24人目。物理学賞では、昨年の赤崎勇・名城大終身教授と天野浩・名古屋大教授、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授に続いて11人目となる。授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金の800万クローナ(約1億1200万円)は受賞者2人で分ける。

 ニュートリノの研究で日本人が物理学賞を受けるのは、2002年の小柴昌俊・東京大特別栄誉教授に続いて2回目。

 ニュートリノはほかの物質とほとんど反応せず、地球をも通り抜ける。三つの型があるが、素粒子物理学の「標準理論」ではいずれも重さがないとみなされていた。もし重さがあれば、長距離を飛ぶ間に違う型に変身する「振動」という現象が起こるはずだと理論的に予想されていた。

 梶田さんは、岐阜県・神岡鉱山の地下にあるスーパーカミオカンデで、宇宙から降り注ぐ宇宙線が地球の空気にぶつかって生じる大気ニュートリノを観測。地球の裏側でできて地球を貫通してきたミュー型の大気ニュートリノの数が、神岡上空でできたものの半分であると突き止め、1998年に発表した。

 大気ニュートリノはどこでもまんべんなく発生するので、「振動」がなければ同じ数だけ観測されるはず。このデータは、地球の裏側から来る間にミュー型から他の型へ変身している決定的な証拠になり、ニュートリノに重さがあることが確実になった。

 その後、「振動」を世界中で精密に調べる実験が行われ、素粒子物理学の大きな流れをつくった。共同受賞者でカナダ・クイーンズ大名誉教授のアーサー・マクドナルド氏(72)は01年、同国にある観測装置で太陽から飛んでくる太陽ニュートリノでも「振動」があることを突き止めた。

 梶田さんは受賞決定後の会見で「この研究は何かすぐ役に立つものではないが、人類の知の地平線を拡大するようなもの。研究者の好奇心に従ってやっている。純粋科学にスポットを当ててもらいうれしい」と話した。

 梶田さんは小柴さんの門下生。スーパーカミオカンデでの観測は、08年夏に亡くなった戸塚洋二・東京大特別栄誉教授のもとで続けられた。小柴さんの物理学賞は、前身の装置「カミオカンデ」で超新星から飛んできたニュートリノを87年に初めてとらえた功績だった。今回の受賞で、日本が長年、世界のニュートリノ研究をリードしてきたことが改めて示された。

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 かじた・たかあき 1959年埼玉県生まれ。81年埼玉大理学部卒、86年東京大大学院理学系研究科博士課程修了、99年東京大教授、2008年東京大宇宙線研究所長。88年朝日賞(神岡観測グループ)、99年朝日賞(スーパーカミオカンデ観測グループ)、仁科記念賞、02年パノフスキー賞、10年戸塚洋二賞、12年日本学士院賞。

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 アーサー・マクドナルド氏 1943年カナダ生まれ。69年米カリフォルニア工科大で博士号取得。米プリンストン大教授、カナダ・クイーンズ大教授などを務めた。現在、クイーンズ大名誉教授、カナダのサドベリー・ニュートリノ観測所ディレクター。