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 環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意から5日で丸2カ月がたった。鯖江(さばえ)のメガネ、今治のタオル、石川の九谷焼の産地は、この動きを好機にできれば、とみている。いずれも安価な輸入品や市場の変化に苦しんでいるが、輸出する際の関税が撤廃されることになるからだ。ただし、地方の中小企業にとって負担となる輸出手続きや海外向けの商品開発など乗り越えるべき課題も少なくない。

 「たかが2・5%、されど2・5%ですよ」。福井県眼鏡協会会長の黒田一郎さん(69)は話す。TPP参加国で最大の市場となる米国へのメガネフレームの輸出には、2・5%の関税がかかっているが、TPPが発効すれば、5年目に撤廃。域内にライバルは見あたらず、販路拡大への期待をにじませる。

 同県鯖江市は、国産のメガネフレームの9割以上を生産する。メガネづくりは明治時代、農閑期の副業として始まった。戦後、国内最大の拠点に成長したが、十数年前から安価な中国製に押されている。めっき塗装や研磨など200以上の工程を経る鯖江のメガネは数万円以上になるのに、中国製は1万円以内で買える。レンズなどの関連製品も合わせた同県の出荷額はピーク時に比べ、半減した。

 生き残りのカギを握るのは海外市場だ。2008年には米大統領選副大統領候補のサラ・ペイリン氏が福井のメガネを愛用していたことが話題に。黒田さんは「高品質メガネの市場は、世界で少なくとも5千億円はある」とみており、「TPPは苦しい産地への贈り物。簡単ではないが、出荷額を1割伸ばすことができれば」という。

 しかし、不安もある。

 7月まで15年間ニューヨークに直営店を設けていた金子眼鏡(鯖江市)。海外事業部長の石原裕士さん(45)は「そもそも関税はわずか2・5%。円高になれば、関税撤廃の恩恵も吹き飛ぶのでは」と為替変動のリスクを気にする。

 米国で医療機器などを販売するには、米食品医薬品局(FDA)の認可が必要。メガネも対象になっており、製品内容を示す書類の作成や手数料の支払いなどの手続きが求められる。鯖江市に支店を持つ乾レンズ(大阪市生野区)は「鯖江はほとんど中小企業。職人だけの企業も多く、英語を使う事務手続きはハードルが高い」と懸念する。鯖江市商工政策課課長補佐の渡辺賢さん(46)は「貿易実務に関しては今までも研修会を開いてきたが、各企業にもっと興味を持ってもらえるよう対策を考えていきたい」と話す。

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