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 北朝鮮が拉致問題の再調査を約束して1年半。調査結果は示されないままだ。拉致被害者家族の蓮池透さん(60)は「進展しない大きな原因が北朝鮮にあるのは自明だが、日本の対応にも問題はないのだろうか」と問いかける。批判や反省の矛先は、安倍政権や運動団体、メディアのほか、自身にも向けられている。

 小泉政権当時の2006年、官房長官だった安倍晋三氏主導でミサイル問題だけでなく「拉致」も理由に含めた北朝鮮への独自制裁を始めた。以来、被害者の安否につながる新たな情報は明らかになっていない。「北朝鮮の反応を予測し、日本はどう救出するかシナリオを練って臨むべきだった。成果が出ていない以上、現時点で制裁に効果があったとは言えないと思う」

 交渉が停滞する背景について「北朝鮮は『拉致を認め被害者5人を帰したら、かえって日本社会の怒りを買った。今後新たに被害者を帰しても日本側が収まらないのなら、これ以上応じる意味がない』と考えているのではないか」と推測。安倍政権に対し「何をもって拉致問題の『解決』とするのかを明示すべきだ。認定された拉致被害者の帰国か。安否確認か。900人近い『特定失踪者』も含まれるのか。それが示されないと、北朝鮮は動かないと思う」と提言する。

 蓮池さんの反省は、拉致被害者家族会の事務局長だった当時の自身にも向く。「強硬派の急先鋒(きゅうせんぽう)、カリスマ事務局長と呼ばれ、いい気分でなかったと言えばうそになる。『外務省は敵だ』などと叫んで主張を先鋭化させた。日本政府が北朝鮮に対する強硬策に転換する大きな原因は、私たちの言動にもあったと思う」

 04年5月、小泉純一郎首相(当時)が再訪朝し、02年に帰国していた弟の蓮池薫さん(58)夫妻や地村保志さん(60)夫妻の子らを連れ帰った。しかし「死亡」とされた被害者の情報がなかったため、家族会からは感謝の言葉もそこそこに批判が続出。「小泉首相はプライドを傷つけられ、拉致問題への情熱が雲散霧消したようだった。今日まで問題が長期化した一因ともなったのではないか」と蓮池さんは振り返る。

 近く新刊を出版する。題は「拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」(講談社)。拉致問題が膠着(こうちゃく)状態となる原因にかかわった「冷血な面々」には、自分自身も含まれると考えている。(編集委員・北野隆一

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