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 ビル・ゲイツ氏は、来場者からの質問やフェイスブック(FB)で募った質問にも答えた。主なやりとりは次の通り。

 堀潤さん(進行役、ジャーナリスト) 社会を変えるために大切なのが、リーダーを育てていくということだと思います。もう一つ重要だと思っているのは、責任意識、あるいは当事者意識を市民ひとりひとりが持つことです。ゲイツさん、より多くの市民に当事者意識を持ってもらうためには何が必要でしょうか。

 ゲイツ氏 おっしゃる通りだと思います。フィランソロピーは若い頃から考えていない限り実現しない。30歳ぐらいになりますと、自分がどうなりたいか、という価値観はほぼできあがっています。ですので、例えば親からその模範を見せてもらう。私の場合はまさにそうだった。そうでなければ大学、あまりリソースがないとしても世界のなかの不平等について知る、あるいは自分の声をつかう、あるいは自分の発言力、あるいはボランティア活動などを通して一定の成功を遂げられれば、「自分が大切と思ったものにお返しすることはできるんだ」と思えます。若い人たちにとって大切なのは、世界で一番の問題は不平等だという事実です。すなわち共産主義か資本主義か、などというものではない、そういったイデオロギーの対立ではなく、「資本主義の成果をみんなが享受できるかどうか」という意識を持ってもらうということだと思います。

 鐘ケ江美沙さん(明治学院大学生) 若者のフィランソロピーへの参加についてうかがいます。私は一般家庭でしたが、グローバルなことに興味を持って育ち、心理的にバリアーはありません。でも、すべての命は同じ価値を持っているのに、学生がボランティアに加わると、ほかの国の問題と日本の問題を分けて考えます。グローバルな問題に若い人たちが共感を覚えるように、例えば貧困などの問題に対して行動できるように、何かヒントを頂けませんか。

 ゲイツ氏 実際に貧しい国に行って自分の目で確かめることほど強力なものはありません。アメリカには「ピースコア(Peace Corps)」という、若者たちが何年か(途上国支援に)コミットして経験をするという平和部隊があります。数週間、数カ月、人によっては何年か平和部隊に所属して、帰ってきていろいろな話を仲間にします。これは大きなインパクトを持っています。世界は成功しつつある自分、家族、そして国と、人類を救おうとしている人たちがいる。食べ物も薬もないという人たちと私たちとは、非常に大きな格差があります。私たちにとっては当たり前でも。

 新しいテクノロジーによってこういった経験をバーチャルリアリティーで提供できるようになるのではないか。例えば、バーチャルな世界で難民キャンプの様子を体験できます。アフリカの村の生活では、女性たちが水をくむのに何時間もかけて歩まなければならない。そういうことをデジタルで体験できるようになるのではないか。デジタルクリエーティブでそういったバリアーを下げることはできると思います。それが一つの助けになるのではないでしょうか。

 こういった考えを広める役割を果たす活動家も必要です。例えば議会、国会などで話をしてくれる人の発言権も必要です。それによって民主主義の社会で勢い、弾みをつけ、みんなの寛大なサポートを得られればと思います。

 乙武洋匡さん(作家) ゲイツさんのミッション、この世界の中での使命、そして人生の中での使命、ミッションは何ですか。

 ゲイツ氏 私の人生の使命は乙武さんと非常に似たものだと思います。私もすばらしい妻がいて子どもが3人います。大変ラッキーだと思います。娘が2人、息子が1人です。私にとってはプライオリティーとしては子どもたちがきちんと育って、子どもたちにきちんとした機会を与えたい。そして好奇心をもって自分でやりたいことを見つけて欲しいと思っています。それが個人的にはとても大切なことです。私は日々、いろいろと学んでいます。そして日々新しいことにチャレンジしています。いま世界で何が起きているか、もっと知りたいと思っています。

 われわれ財団では、リソースが豊富にあることを、大変ラッキーだと考えています。なので非常にゴールは高いものを設定しています。そのうちの一つは、ハンセン病、マラリア、結核あるいはHIV、ポリオ。ポリオはいままさに撲滅が近いところまできています。ポリオというのは文字どおり何百万人の子どもたちをまひにしてきた、それが本当にいまなくなろうとしている。私の人生のうちにこうした感染病すべてが撲滅できればいいなと思っています。貧しい人たちが本当につらい人生を強制されているのは、こういった感染病、そして栄養失調によるものだからです。それ故に体も十分に発達しないということで、やらなければいけないことはたくさんあると思っています。妻のメリンダと一緒に。幸いリソースはありますので、これを最大限活用して前進していきたいと思っています。これを変えることができると考えています。

 マイクロソフトを立ち上げたときも、ひとりひとりがパソコンを持ってほしいと。まだひとりひとりというところまで行ってませんけれども、近い所まで行っています。同じようなものです。夢は同じです。すなわち感染症は、私が生きているうちに撲滅したいということです。

 駒崎弘樹さん(NPO法人フローレンス代表理事) チャイルドケアのNPOを運営しています。(日本は)高齢者が増え、子どもが減り、そして、毎年30万人の人口が減っている少子高齢化の国です。日本の社会起業家に投資をして頂きたいと思いますが、どう思いますか。

 ゲイツ氏 より多くのサービスを提供し、女性を解放し、そして働けるようにする。子ども、つまり家庭と仕事の両立が難しいということでは問題です。日本は積極的に素晴らしいゴールを持っていると思います。

 人口(問題)についてはちょっとわからないですけども、日本は寿命が最も長い国です。健康、寿命という観点から言えば、日本は世界でベストの長寿国です。そして、子どもが1人、または子どもを持たないというのは、自由を享受しているということでしょう。多くの国でこういったことをやりやすい国もあります。人口が多い国、または増えすぎている国もあれば、少ない国もあります。そして、移民や移動が起こることもあります。社会サービスを増やさなければならない、それはその通りだと思います。

 これは私の専門分野ではなく、私たちの財団の重点分野でもありません。でも、例えば北欧諸国を見て頂ければ、とてもうまくやっていますから、ベストプラクティスから学ぶことがあるでしょう。女性に対する選択肢が多く、両方が両立できる状態だと思います。

 遠藤夢歩さん、大内玲奈さん(いわき市立勿来(なこそ)第1中学校2年) 私たちは故郷の復興のために福島で活動をしている中学生です。今年の夏、街頭に立って実際に募金活動をしたのですが、募金に対してとても積極的で励ましの言葉までかけてくださる方と、その一方で私たちの呼びかけにまったく振り向いてくれない方と、社会貢献に対する意識の差が大きいと感じました。いまの日本社会に寄付という習慣を定着させるためにはどのような手立てが有効でしょうか。アドバイスをいただければと思います。私たちはこれからも福島のために中学生にできることをしていきたいと思っています。

 ゲイツ氏 福島で起きたことは大変なことだったと思います。その募金活動をしているというのは素晴らしいことです。復興のために。われわれの財団の通常やっているものの中に入るものではなかったのですが、大変な目に遭っている方々のために寄付を募るということも特別にやりました。例えば住宅の復興、あるいは通常の生活をできるだけ早く復興するための寄付、募金活動もしました。

 なぜその活動に協力してくれないか。忙しくてそんなことやっている暇がないという人もいるでしょうし、あるいは人によってはお金をあげて、ちゃんといくべきところにいくんだろうかという不信感を持っている人もいる。というのも、かつてお金をあげたけれどもインパクトがなかったという経験をしている人もいるからです。ですので、例えば写真ですとか、それからデジタルのツールなども使いながら、できるだけ本当に寄付したお金がいいもののために使われたなということを見てもらうということができれば、ずいぶん変わってくるのではないかと思います。ただ、これは大変ですよね。というのも、時間がたつなかで人間の記憶はどんどん薄れていきますから。ですからクリエーティブな人たちが集まって考えなくてはならない。「いまもなお大変な生活をしている人たちがいるんだ」ということをどう伝え、どう訴えていけるのかを考えることが必要です。

 それから、実際に「こんなに前進がありましたよ」ということが見せられれば、それも大きなインパクトがあると思います。必要な人たちがいるのだということを伝えるということと、ここまでできましたよということを伝えるということが大切です。本当にいい活動をしていらっしゃると思います。

 FB質問① 社会的投資、寄付を行う際に大事にしているものは?支援先やテーマの発掘、選定で重視していることはなんですか。

 ゲイツ氏 誰もが自分がフォーカスをするものを選ばなければなりません。私たちは「グローバルヘルス(世界規模の医療課題)」がメインの活動で、60%を占めています。金融サービス、農業、衛生など健康関連が多い。例えば、新しい薬の試験提供をするのにそれぞれ1千ドル使えば、たくさんの命を救うことができます。私たちの活動が大きく、強いインパクトを持ちうる。貧しい国では1千ドル使えば誰かの命を救えます。例えば蚊帳を提供する、ポリオでまひにならないようにする、HIVの薬を提供するなども。これがなければ人の命が失われてしまうようなもの、それが選定の基準です。

 FB質問② 20年後の世界はどうなっていると思いますか。

 ゲイツ氏 財団ががんばることによって、世界のヘルス、医療・保健というものがすいぶんと良くなっているのではないかと思っています。エイズ、HIV、結核はかなり減っているか、あるいは完全に撲滅されているかもしれません。技術ということでいえば、ロボット、あるいは自動運転の車、あるいは自動飛行する飛行機というのは、もうすでに実現していますね。特に日本を中心に、いろんな人が何十年も話をしてきた。コンピューターのビジョン、あるいはコンピューターの能力が制約になっていたのが、いまようやく実現している。ちょっとこわいところもありますけれども、でもほとんどは良い、ワクワクするようなものです。

 ですので、やはり技術が変革を担う一番大きな要素になると思っています。新しいワクチンや薬がどんどん出てくるでしょう。もう一つ言うならば、私が大変期待しているのは20年後には新しいエネルギーの作り方がいまよりもっと安く、と同時に温室効果ガスをまったく排出しないような発電方法が見つかっていること、それによって気候変動がもう起きていないということを期待しています。IT、医療、そしてエネルギーというのが進展すれば、世界が本当に良くなると思います。

 堀さん AI(人工知能)についておうかがいします。これはリスクでしょうか。

 ゲイツ氏 これはほとんどはいいものだと思います。手術をうまくできるようにするとか、より多くの命を救える、それからガンの治癒、それから労働力の開放も。そしてそして高齢者のヘルプになったりするということで、より生産性を高めることができます。こういった非常に日常的な仕事をやってくれるということになります。いろいろなツール、助けになるという面があります。ただ二つ心配なことがあります。それに気づいていなければならない。非常に急速にこれが浸透すると仕事がなくなってしまう。こういった能力が増えるということですが、きちんと意味のある仕事ができるようにする、トレーニングを普通の人がうけて意味のある仕事につけるようにしておくことが重要でしょう。

 これから20年、30年、政府はこういったことを考えていかなければなりません。長期的にみて、いつこういったマシンの知能が上がっていくのか、心配をしている人もいます。ですから事前にプランを立てて準備をしていなければならない。こういったことが起こらないという人もいるし、こういったことが起こるだろう、でもマシンがあるのはいいことじゃないか、という人もいます。これは非常に興味深い議論であると思います。いろいろなテクノロジーリーダーの間で行われています。

 FB質問③ あなたは世界の貧困や病気の撲滅にチャレンジしているが、人口増加という問題が待ち受けています。いまの地球はどこまで耐えられるか。その上限すらなくすイノベーションを人類は生み出せますか。

 ゲイツ氏 ここは鍵となるところだと思います。ぜひ理解して頂きたい。世界はすでに子どもの数ではピークは過ぎています。毎年生まれる子どもの数は世界的には減っている。では、なぜ2050年までに75億~95億と言われるぐらい人口が増えるのか? 答えは寿命が延びているからです。人口のピラミッドがどんどん変わり、60~80代が増えてきています。高齢化で人口増が起きている。人口は100億になるのかもしれません。

 私は、課題に対応できると自信を持っています。きちんと食糧が行き渡り、医療・保健も十分になる。一方、気候変動は大きなチャレンジです。環境にきちんと対応することが必要です。医療は、どんどん良くなると一世帯あたりの子どもの数が減っていきます。乳幼児の死亡率が減ると、母親たちはそんなにたくさん産まなくていいと思う。現在、人口が伸びているところは医療状態が悪い所です。そこを手当てすれば人口爆発はどうにかなります。いますぐ地球で支えきれないという問題ではありません。

 FB質問④ 日本では、選挙に投票できる年齢が20歳から18歳に下げられます。あなたにとって18歳はどんな時期でしたか?そしていまの18歳に何かメッセージを送っていただけないでしょうか。

 ゲイツ氏 私が18のとき、ハーバード大学に進学していました。楽しかったです。父が授業料を払ってくれて、毎日ちゃんと食べるものもあって、若い仲間と夜まで話をして、授業はそんなに難しくなく、そして最後に勉強すればなんとかなる。だからとにかく楽しいだけ。だから別に4年いてもよかったんです。

 だけれどもマイクロプロセッサー、コンピューターのチップがものすごく強力になった。そしてソフトウェア産業が台頭してくるだろうと私の友人のポール・アレンが「ぼくたちも始めたほうがいいね」と言ったんです。そこでハーバードをやめることにしました。マイクロソフトがうまくいかなかったら学校に戻ればいいと思っていました。非常に大きなリスクをとったでしょうか。でも、マイクロソフトは非常に順調に、そのあと成功しました。大学に3年間行って、もうそろそろ卒業の年に入りつつあったんですけれども。ほとんどの人にとっては大学はすばらしいところで残るべきところかもしれません。そしてそこで、やりたいことがあってやれたならば、それはすばらしいと思います、私は大学はとても好きだったし、大学のときにいろんなことを学びました。そして私はいまでも受講するのが好きです。オンラインで毎年毎年、いろんなコースを受講しています。私は学生であることが好きだからです。

 渋沢健さん(コモンズ投信の会長) ミューチュアルファンドの会社の創設者です。質問はフィランソロピーと企業ということについてですが、1980年代、日本の企業というのはかなり社会貢献でお金を出していた。90年代になってお金がでなくなったと。2000年ごろからCSR(企業の社会的責任)が定着して、CSRとフィランソロピーが一緒になった。ところが、寄付行為をする会社の場合、株主からいろいろと言われることになるわけです。ところが、いわゆる事業活動で社会貢献できるんだということも言われるようになっています。いまコーポレートガバナンスが言われ、企業のイノベーションも言われる中で、イノベーションとしてフィランソロピーとコーポレートガバナンスをつなぐということは可能でしょうか。

 ゲイツ氏 期待としては、いわゆる市場勢力ということによって、企業は社会貢献を求められる。特に専門知識を持っているところ。例えば社員にボランティア活動、ソーシャルサービス、教育などの支援をせよということを株主が求めるということもあります。あるいは製薬会社なども貧しいところ、貧しい人たちに一部のお金を出すということもあります。自費という考え方、日本の製薬会社にも、そういうことを始めているところがあります。そういったことが起きていることを私は大変うれしく思っています。これはもっと評価をして欲しいと思っています。

 ということで、CSRの重要性はたいへん大きなものがあると考えています。単に会社のトップが寄付すればいいという問題ではない。我々はいい会社であって、こういったものに貢献していると思えるというのは誇りになりますし、またソフトの会社としてもボランティアとしてインパクトのある形でソフトが使ってもらえるようにするということができます。もちろん会社によっては寄付もするし、それから専門的な分野での支援もするという両方ができる。それは国によっても、会社によっても事情は違うと思いますが、いわゆるイメージ、あるいは評判というものが非常に重要です。いいイメージを持ってもらっている会社というのは、人の採用でも大きなインパクトがあると思いますので、その意味で大きな流れになります。単に寄付金を出す、株主との対応ということに関しては、ルールを変える必要があるのかもしれません。そういうことはまったく必要ないと考えている会社があるなら、それは大きな間違いです。やはり専門知識、自分たちの持っているものを共有するというところに価値観を認めることが大切だと思います。

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