■ロボタクシー、地域の足目指す

 12月半ば、その車は東京都内の住宅街を走っていた。一見、ふつうのミニバンだが、車のまわりにはレーザーセンサーが5個、フロントガラスにはメガネのようなカメラ。助手席にはカーナビの画面より一回り大きい、コンピューターのディスプレーが載っている。

 都内のベンチャー、ZMPが開発中の「ロボットタクシー」。公道では人間が運転するが、運転手なしでも走行できる自動運転車だ。2020年までの実用化をめざし来年2月にも、神奈川県藤沢市の国家戦略特区で、初めて客を乗せた実証実験が始まる。

 「このままでは、田舎の両親が病院にも買い物にも行けなくなると思って」。それまで二足歩行ロボットなどを手がけていたZMPの谷口恒社長(51)は、自動運転車の開発にかじを切ったきっかけをこう語る。

 谷口社長のふるさとは、兵庫県姫路市船津町。JR姫路駅から直線距離で20キロほどだが、実家から最寄りのJR香呂駅に行ける路線バスはなく、姫路駅に向かうバスは、平日でも1日5便しかない。近くのコンビニで買い物をしていた主婦は、「だれもバスなんてあてにしないよ」。

 運転が難しい高齢者はタクシーを使うしかない。だが、香呂駅で待つタクシーはたった1台。60代の運転手は「2台あったらやっていけない。運転手のなり手もいない」と話した。

 過疎で鉄道、バス、タクシーなどの公共交通が細ると、住民は車に頼り、ますます公共交通が成り立たなくなる。高齢で運転ができなくなったとたん、生活の基盤を失いかねない地域が全国に広がる。都市の郊外ですら、そんな地域が増えている。

 ロボットタクシーは、そんな失われつつある「地域の足」を取り戻す試みだ。

 めざすのは、スマートフォンでタクシーを呼び出すと、自動で迎えに来てくれ、行き先を告げれば自動で運んでくれるサービス。鉄道の駅と大型スーパーを結ぶコースで行われる実証実験では、運転手らが乗った状態で、広い幹線道路は自動運転で走り、幹線道路と自宅の間は有人で運転する。谷口社長は、「まずは安心して乗ってもらうこと」と話す。

 大手メーカー各社もこぞって自…

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