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 師走の金沢21世紀美術館(金沢市)。薄暗い部屋に置かれた培養器のなかで、ヒトのiPS細胞からつくられた心筋細胞がうごめいていた。細胞には、バーチャルアイドル初音ミクの特徴を織り込んだDNA情報が注入されている。

 人間とは何なのか――。アーティスト集団BCLによる展示「ゴースト・イン・ザ・セル」は、そんな根源的な問い掛けを発していた。

 ドクン、ドクン。心臓の鼓動のような人工音に合わせ、四方の壁に次々と絵が映し出される。グーグルの開発した人工知能(AI)が、金沢の街の写真をもとに描き出した風景画だ。

 企画した学芸員の高橋洋介さんは「創造性さえも機械が代替する時代に、人間は一体どのようにしてオリジナリティーをつくっていくのか。論理的ではない飛躍を含んだ想像力、社会の常識から逸脱した思考がますます重要になってくる」と語る。

 AIの可能性を探る試みは、「人間らしさ」を見つめ直し、再定義することにもつながる。

 公立はこだて未来大の松原仁教授らのグループは、SF作家の星新一(1926~97)の「新作」をつくる研究を進めている。約千本の星作品のストーリー展開や文章表現などをAIで解析。昨年9月には、人間との共作で星新一賞に応募した。

 松原教授は「将来的には、個々人の嗜好(しこう)に応じて100万人に100万通りの小説を届けるようなこともできるかもしれない。人工知能が天才的な名作を書けるかどうかは怪しいが、『普通に面白い』作品を量産するのには向いている」とみる。

 AI創作の拡大は、社会や制度に変容をもたらす可能性もはらんでいる。

 米国では、高額な和解金や賠償金を目当てに特許訴訟を仕掛ける「パテント・トロール(特許の怪物)」が問題化している。音楽でも詩でもいい、AIに何億・何兆と膨大な数の作品をつくらせ、誰かが類似作を発表したら権利侵害で訴える。そんな「著作権トロール」が横行する懸念はないのだろうか。

 日本の著作権法では、著作物を…

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