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 3日にイランと断交したサウジアラビアのジュベイル外相は4日、イランへの民間機の発着や国民のイラン渡航を禁止し、経済関係も断絶する考えを明らかにした。ロイター通信が報じた。サウジに続き、4日にはバーレーンとスーダンもイランとの断交を宣言。アラブ首長国連邦(UAE)も駐イラン大使の召還など、「外交関係の格下げ」を表明した。サウジによるイスラム教シーア派指導者の死刑執行をきっかけに先鋭化した中東の2大国の対立は、周辺諸国を巻き込んで深刻化している。

 バーレーンとスーダンはサウジが昨年3月に始めたイエメンへの軍事介入に参加するなど、サウジと緊密な関係にある。特にスンニ派の王政ながら、シーア派が住民の過半数を占めるバーレーンは、反政府デモが広がるたびに「イランが関与している」と主張。2011年にはサウジを中心とする合同軍がデモを鎮圧した。

 対立の発端は2日、テロ活動に従事した罪で14年に死刑判決を受けたシーア派指導者ニムル師を処刑したと、サウジが発表したことだ。同じシーア派の指導者が国を治め、同師を処刑しないよう要請してきたイランは猛反発。最高指導者ハメネイ師が「サウジアラビアは神の報復に直面するだろう」との声明を出した。イランにあるサウジ大使館や領事館は、暴徒化した群衆に襲われ、放火された。

 一方でサウジから見れば、ニムル師は体制転覆を唱えた「危険人物」。宗派対立をあおっているのはイランの方だ。ジュベイル外相は過去のイランでの外国公館襲撃事件にも触れ、「イラン政府が黙認している」と批判した。

 ともに保守的なイスラム教国で産油国のサウジとイラン。両国は衝突と融和を繰り返してきた。共和制でシーア派を国教とするイランと、その影響力の拡大を防ぎたいスンニ派の王制国家サウジの覇権争いだ。

 両国関係は、11年に中東に広がった民主化運動「アラブの春」で、一気に険悪化した。サウジなど湾岸諸国は、国内のシーア派住民によるデモを「背後から手引きした」とイランを非難した。

 さらにサウジで昨年1月に即位したサルマン国王は、イエメンへの軍事介入などタカ派の姿勢が目立つ。メッカで昨年9月、巡礼中のイラン人464人が死亡する事故が起きるなど、対立が深まる事案も続いた。

 両国政府が、「敵国」の存在を国内の引き締めに利用しているのも事実だ。カーネギー中東センターのレナド・マンスール客員研究員は「両国とも、相手の反発を十分に計算した上で行動している。両国とも、この『冷戦状態』の継続を望むだろう」と指摘する。

 ただ両国の対立は、スンニ派とシーア派が混在する中東全体の分断を招く。イラクでは3日、スンニ派のモスクを狙った爆弾テロ事件が相次いで発生。宗派対立をあおって勢力の拡大をめざす過激派組織「イスラム国」(IS)などの活動を活発化させかねない事態になっている。(ドバイ=渡辺淳基)

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