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 環太平洋経済連携協定(TPP)の合意に伴い著作権法が改正されることになった。著作権侵害が「非親告罪」となり、権利者の告訴がなくても捜査機関の判断で立件できるようになる。政府は本来の目的である海賊版摘発などに限定して法改正を進める方針だが、日本のポップカルチャーを下支えしてきた「二次創作文化」の現場では不安もじわりと広がっている。

 昨年12月29~31日、東京・有明の東京ビッグサイトはアニメファンらであふれかえっていた。漫画やアニメ好きによる同人誌の即売会「コミックマーケット」(コミケ)の会場だ。「人気作家」のブースには朝から列ができた。

 出品作の7割以上が、プロのアニメや漫画のキャラクターを、アマチュアの作り手が自作に登場させる「二次創作」だ。人気漫画「進撃の巨人」のキャラクターを描いた二次創作など約50冊を買い込んだ横浜市の女性(36)は「自分の好きなキャラが本編とは違った設定で活動する様子が楽しい。映画の特別編をみるような気持ち」と話す。

 友だちと訪れた都内の中学2年、亀田優夏さん(14)は人気サッカー漫画「イナズマイレブン」の二次創作漫画などを買った。「サッカーは全く描かれていなくて、主人公たちの日常生活が描かれているんだけど、スピンオフみたい」

 二次創作は原作に対する著作権侵害の可能性が大きいが、これまで大きな問題にはならなかった。描く方も同人誌を買い求める方も、原作のファン。同人誌からプロに転じた作家もたくさんおり、原作者や出版社はそうした活動を「黙認」してきたからだ。出版大手のKADOKAWAなど、二次創作に新しい才能を見いだそうとする動きも活発だ。

 コミケは1975年に始まり、夏と冬に開催。初回の参加サークルは32、来場者は約700人だったが、近年は参加サークル数3万5千、来場者数は50万人を超えるほどに成長した。

 コミケを主催するコミックマーケット準備会はTPP合意後の国の文化審議会で、「二次創作はクリエーターの裾野を広げている。将来の名作・クリエーターの芽をつぶさないよう自由な創作活動の維持を」と訴えた。出版社で組織する日本書籍出版協会などからも「非親告罪の対象は社会秩序や経済秩序に重大な影響をもたらすような悪質なものに限定するべきだ」といった意見が出された。

 安倍晋三首相も昨年11月の知的財産戦略本部会合で「二次創作が萎縮しないように留意します」と明言。国は非親告罪の適用範囲について、悪質性が明らかで原作者が経済的に甚大な被害を受ける海賊版など限定的にする方向だ。

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