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 歴女ブームの火付け役とも言われるゲーム「戦国BASARA」。生みの親であるカプコンの小林裕幸プロデューサーに、10周年を迎えたBASARAの歩みや、真田幸村の魅力について聞きました。

 ――戦国BASARAシリーズが昨年で10周年を迎えました。

 2005年7月に、プレイステーション2で1作目を発表して以来10年。ファンのお陰もあり、派生作品も含め、28本ものゲームを出し続けることができました。最初はこんなに続くと思っていませんでしたし、とにかく1作目を成功させたいという思いだけでした。

 ――当初は社内ですら「こんなゲームは売れない」という声があったとか。

 そうでしたね。若かったから何とか頑張れた。今だったらできなかったかも(笑)。

 ――ゲーム中では、かなり大胆に武将をデフォルメしています。

 このゲームならではの特徴を出したかった。ずっと一緒にやってきたディレクターの山本真とは、「武将を登場させて、ストリートファイターのような個性的なキャラクターゲームにしよう」という話をしていました。

 伊達政宗が刀6本、真田幸村がヤリ2本を持っている。幸村はライダースジャケットのような現代風の衣装を着ていて、政宗は英語も話す。そうしたキャラクター設定が受けたことで、存在感のあるアクションゲームにできたと思います。

 ――本多忠勝がロボットのような姿だったり、千利休が二重人格だったり、キャラ設定に遊び心がありますね。

 第1作の時に、戦国時代に詳しい人間が(制作チームに)1人しかいなかったんですね。だから「ふざけるな」と止められることがなかった。それがよかったのかな(笑)。

 とはいえ、戦国時代が舞台なので、最低限のルールは決めていました。一つは「宇宙を出すのはやめよう」ということ。まあ、空からレーザービームを出すとか、多少はあるんですけど。あとは「海外に行くのはやめよう」と。海外の偉人を出してほしいとよく言われるのですが、やはり日本を大事にしたい。ザビーというキャラがいますけど、あれはあくまでオリジナル。フランシスコ・ザビエルとは関係ないですから。

 ――ほかにも、決めごとはありますか。

 血を出すか出さないかというのは、1の時にすごく悩みましたね。僕は「バイオハザード」のように、血が出るゲームもつくってきました。「あれはゾンビなんです」と言うんだけど、どうしても「人を撃つゲーム」と思われてしまう。

 そういうこともあって、戦国BASARAは血が出ないゲームにしたかった。斬った時に血が出なくても、光や音で十分爽快感は演出できます。小さい子どもやおじいちゃん、おばあちゃんでもプレーできるようにするには、その方がいい。とにかく間口を広げたかったんです。

 ――なぜ幸村と政宗を主人公にしたのですか。

 幸村も10年前は、今ほど知名度がありませんでした。だけど調べてみると、戦国武将好きの人たちの間では幸村と政宗は結構人気があったんですね。そこで、世代の近いこの2人を主人公にして、若い青年が天下を目指すストーリーにしました。織田信長が悪のラスボスで、武田信玄や上杉謙信らベテラン勢もせめぎ合っているという相関図です。こういう話なら、少年マンガ好きな人も食いつくだろうと。

 ゲームでは幸村は信玄の家臣という設定ですが、実際には2人が活躍した時代はずれています。歴史の「if」であり、時間のウソをついているわけです。それでも、幸村を史実通りの年齢にして本当の関係性を描くよりは、戦国のドリームチーム、オールスターを実現しようと考えました。

 ただ、間違って覚えたまま学校のテストで書いて、お母さんに怒られるっていうパターンはやめてほしいですね(笑)。戦国BASARAをきっかけに正しい歴史を勉強してもらえればと思います。

 ――登場するキャラのなかで、幸村は人気がありますか。

 幸村を好きな人は比較的多いです。ゲームのなかの幸村は、熱血ヒーローのイメージ。クールな設定の政宗とは対照的です。わかりやすくまっすぐな性格で、ミスをしてへこんでも頑張って成長していきます。大人の女性からすると、かわいらしく映る部分もあるのでしょう。

 2011年発売の「戦国BASARA3 宴」の発売時に投票権を封入して、「BSR48選抜総選挙」を実施しました。翌年に結果発表をしたのですが、幸村は政宗、石田三成に次ぐ3位でした。幸村はずっと人気があったので、3位という結果は衝撃的でしたね。それ以来、怖くて人気投票はやってません。前田慶次が11位でベスト10から落ちてしまうなど、結構ショックなことが多くて…。

 「またやろう」という声はあがるのですが、「ダメだ」と言って潰しています(笑)。公式に順位を出して、キャラクターに変なイメージがつくのもよくないかなと。

 ――実際の幸村の魅力は。

 真田家はドラマがありますよね。様々な武将に囲まれて、あっちについたり、こっちについたり。真田の血筋を残すために、親兄弟で東軍と西軍に分かれて戦う。「日本一の兵(ひのもといちのつわもの)」という言葉もあるように、幸村は大坂の陣で徳川家康をあと一歩まで追い込みます。最後には負けますが、阪神タイガースと一緒で、負けている人ほど応援したくなるものなのかもしれません。

 ――幸村は大坂の陣の時点で歯も抜けて白髪交じりだったとされていますが、戦国BASARAではイケメンに描写されていますね。

 映画もそうですが、カッコイイ男が熱く戦う姿っていいですよね。トム・クルーズやキアヌ・リーブスが必死になって頑張るような話、男性も女性も好きじゃないですか。ゲームも映画やドラマと一緒。生き様がすごくても、見た目がダメだと興味を持ってもらえません。幸村に限らず、幅広い層に受け入れてもらうために、爽やかでカッコイイ姿に描いている部分はありますね。

 ――マンガやゲームでは、国家から鉄道、戦艦まで様々なものを擬人化する流れが盛んです。戦国武将は人なので擬人化とは言えませんが、BASARAの個性豊かなキャラクターには相通じるものを感じます。

 武将を扱って良かったと思うのは、本当にいた人なので重みが増すんですね。例えば伊達政宗が「ブルードラゴン」という名前だとしたら、刀6本で英語をしゃべる、ただのゲームキャラクターになってしまう。お客さんにもスルーされてしまうでしょう。政宗であることによって、「これが政宗なの?」と引っかかるわけですよ。

 「バイオハザード」でも「デビルメイクライ」でも、そのキャラクターがどういう人物でどうやって生きてきたのか、設定を散々詰めます。その点、戦国BASARAは歴史上の人物という元々のベースがあるのが大きい。説得力があるんです。

 ――ゲームへの反響はいかがですか。

 20代前半を中心に、10代から40代まで幅広い世代にプレーしていただいています。男性はアクションの面白さを楽しんでくれる人が多いですね。一方、女性はキャラクターやストーリーにひかれる傾向があるようです。

 ――イケメンキャラも多いですし、やはり女性人気が高いのでしょうか。

 いえ、購入者の比率で言うと男性が7割、女性が3割程度です。有料イベントや舞台などでは9割以上を女性が占めますが、プレーしているのは男性が多いですね。社内でも誤解している人がいるんですが。

 ――キャラをイケメンにしたり、血が出ないようにしたりというのは、女性を取りにいく戦略なのかと思っていました。

 女性を排除しないようにしよう、女性も含めてあらゆる年齢の人にアピールしよう、という思いはありましたが、女性狙いというわけではありませんでした。おじいちゃんの島津義弘や個性的なザビーなど、イケメン以外のキャラもいますからね。

 1のヒットを受けて、結果として女性がワーッと来た。歴女ブームが広がり、取材が増え、テレビでも取り上げていただきました。とてもありがたかった半面、男性が離れてしまったらヤバイ、どうしようという懸念もありました。

 商品化の話もたくさんいただきますが、いまだに化粧品や女性用下着はNGにしています。あまり「戦国BASARA=女性」というイメージがつくと、男の子は引いてしまうので。

 ――出したら売れそうですが。

 売れるとは思うんですけど、短期的な売り上げのための商売はしたくないんです。やはり長く続けていかなきゃいけないですから。

 ――各地の地方自治体と次々にコラボしていますね。

 最近だと昨年11月の高知県知事選で、長曾我部元親が啓発ポスターに使われました。甲府市とは2019年まで5年間、観光PRで連携していく包括協定を結んでいます。ゲームのファンにゆかりの地へ来てもらうことで、地域活性化の後押しができたら、と考えています。

 ――最後に、今後の展望をお聞かせください。

 2016年7月までは10周年イヤーと位置づけています。1月20日にCD「戦国BASARA 武将テーマ ボーカルコレクション」を発売。3月5日には東京国際フォーラムで記念イベント「戦国BASARA10周年祭~十年十色の宴~」を開催します。そして夏には、新作「戦国BASARA 真田幸村伝」も発売予定です。これからも戦国BASARAにご期待ください。(神庭亮介

     ◇

 〈こばやし・ひろゆき〉 1972年、名古屋市生まれ。95年にカプコン入社。「バイオハザード」「デビルメイクライ」など人気作の企画からプロモーションまでを担当。「戦国BASARA」ではシリーズプロデューサーを務める。