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 前田健太投手(27)が憧れのメジャー・リーグに移籍することができた。ダルビッシュ(レンジャーズ)や田中(ヤンキース)ら多くの仲間が経験したリーグで本人も内心、ホッとしていることだろう。

 前田は2007年、カープに入団。その年はさすがに1軍の出場はなかった。08年は黒田がアメリカに行ったことで前田の出番が多くなり、19試合で9勝2敗と素晴らしい勝率を記録した。勝負事をしているものが「運」ということを言うな、という人もいるが私はあると思う。黒田が抜けなければローテーションに入れたか。前田の強運があると思う。そしてチャンスにしっかりと成績を残して自分の場所をつくった前田の力を認める。09年は29試合で8勝止まりだが193イニングを記録、防御率3・36で存在をアピールした。

 私はよく若い選手が出てきたときに「3年続けて成績を残して初めて周りの人が信用してくれるのだよ」と言うが、10年の成績は28試合で15勝8敗、215回と3分の2イニング、防御率2・21はタイトルを獲得。この年から3年続けて200イニング登板を果たしてセ・リーグを代表する投手に駆け上がった。

 多くのタイトルを獲得してきたがその間、年間31試合から26試合登板と安定した体調管理で問題なく過ごしてきての今回のドジャース移籍である。契約にあたり、かなり厳しい身体検査を受けたという情報があり、本人も以前に少しひじが痛かったことがあるという自己申告もあって契約はかなり抑えられた感がする。8年契約(年俸総額29億5千万円)で、これはもしひじが故障した時には2年間ぐらい必要ではないかというところでの処置ではないかと考えられる。年間報酬が日本時代とあまり変わらない300万ドルぐらいというのはそのことを含んでのことではないだろうか。その代わり、故障なくプレーできた時には多くの出来高契約でカバーしているのが今回の特徴。前田ほどの実績を残した投手にしては少し変な契約だが最近、日本からアメリカに渡った投手の多くが故障でチームが満足してくれる成績を残していないという点が今回の契約に現れているのだろう。

 では次に「通用しますか」と心配をされているファンがいらっしゃいますが、先日行われたプレミア12でも、前回のワールド・ベースボール・クラシックでも実績は残してきている。ストレートのスピードが147~153キロ、スライダー、ツーシーム、チェンジアップ、フォーク、そして相手打者を観察する経験。全てにおいて十分なものは持っている。

 心配があるとすれば湿度。これはボールが滑ることに関係する。また、日本と違う中4日の登板日程、移動に慣れることが必要だろう。マウンドの高さ、硬さ、これは下半身の疲れに響く。日本では感じられない打者の身体の大きさ、腕の太さ、バットのスピードには十分に注意が必要だろう。特に下位の打者は不器用だが力はある、当たれば飛びます。簡単にカウントを取りにいかないよう用心すれば難しい打者は少ないと思う。

 いずれにしても同じ野球をするのだが、初めて経験することも多いと思う。そんな時には1人で考え込まずに周りの人に遠慮なく聞くことが解決の近道になるだろう。それが成功への鍵かも分からない。(朝日新聞社嘱託 衣笠祥雄)

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